「キャピタルゲインの使い道は…」SO長者たちの本音とリアル

「ストックオプション(SO)を行使・売却したあとの使い道は?」これは、SOを語る上では欠かすことができないテーマです。特にスタートアップの創業時から1〜2年以内という早い段階で入社し、そのタイミングでSOを付与された方々は、どれくらいのキャピタルゲイン*を得ているのか?また、上場後はどのタイミングで売却を決め、どのような使い道を選んだのか?
今回はSOによって高額なキャピタルゲインを得たという4名が登場。「お金を得た」ということだけではない、リアルな心境を明かしてもらいました。
*キャピタルゲインとは、SO行使後の株式を売却することで得られる利益のこと
Aさん
創業1年目のスタートアップへ入社。現在も在職中。SOを一部売却して得た利益は数億円ほど。
Bさん
創業2年目のスタートアップへ入社。退職後は別のスタートアップへ転職。SOの一部売却で得た利益は数千万円ほど(四捨五入すると億単位になる)。
Cさん
創業数ヶ月のスタートアップへ入社。現在は退職し別のスタートアップに勤務。SOの一部売却で得た利益は10億円ほど。
Dさん
創業2年目のスタートアップへ入社。退職後は別のスタートアップへ転職。全SO売却で得た利益は数千万円ほど(四捨五入すると億単位になる)。
質問1:「このSOはすごい価値になる」と感じたのはいつごろ?
Aさん:私は創業1年目のスタートアップに入社したのですが、SOを付与された時点で「ものすごい価値になるのでは」という感覚を持っていました。それは金額を具体的に計算したからではなく、どちらかと言うと「この事業は大きくなるぞ」と会社への可能性を強く感じていて、それによってSOの価値も上がると思ったからです。ちゃんとSOのキャピタルゲインの計算をしたのは、会社の上場が見えてきたころでした。
当時、「会社からもらったSOがすごい価値になりそうだ」と家族にも話しましたが、あまりよくわかっていなかったせいか「ふーん」という反応でした。同じ界隈にいる知人のなかには勘づく人もいて「お金持ちじゃん!」と茶化されたり、会社に米国のマンション資料がどーんと送られてきたりしたことはありましたけれど(笑)。そういった周囲の反応もありながら、自分でも少しずつお金の使い道を考えていきました。
Bさん:私は正直に言うと、会社がどういう状態になったら上場するのかもわかっていなかったので、SOを強く意識することはありませんでした。一方、上場前に付与されたSOの行使価格が、初期のころに比べてかなり上がっていたのを見て、一気に温度感が変わったことを覚えています。SOの行使価格は会社の価値に連動するというのは何となく知っていたので。
家族には「説明してもわからないかもしれない」と思ったので、何も伝えていませんでした。父親は金融系の仕事をしていたこともあり察していたようですが(笑)、そのほか、仕事つながりではない人には一切話していませんでしたね。

Cさん:私は前職から給与を大幅に下げて入社していたので、その穴埋め的な意味合いも込めてSOをもらったのが始まりでした。このときの行使価格はたしか数円ほどでしたが、株式に関する知識がぜんぜんなかったので「このSOはいくらくらいの価値になるんだろう?」ぐらいの感じでしたね(笑)。そこからSOを何回かもらって、行使価格が数千円以上になって初めて「どんどん価値が上がっているな……」と実感が湧いてきました。
「SOによって大きなお金を得るかも知れない」と母親には伝えました。なぜなら、SOの付与数が本名や住所とともに有価証券報告書 (Ⅰの部)に載ることがわかっていたんですね。その影響によって詐欺みたいなものが起こってはいけない、と考えていたのが大きな理由です。
Dさん:私もみなさんと似ていますが、SOがかなりの価値になるぞと実感したのは、会社が上場する直前でした。上場して「初値予想がこれくらいの額になる」と知って、そこで初めて「すごい額だ……」と驚きましたね。
AさんやBさんと同じく、私も家族にSOのことは話していません。社内の事情を知っている人とだけコミュニケーションをとっていました。
質問2:キャピタルゲインの使い道は?また、SOを行使したときの心情は?

Aさん:初めてSOを行使したときの気持ちは、意外と淡々としていましたね。前述のとおり、家族もその価値をあまりわかっていなかったこともありますし、私自身がもともと自分のためにお金を使おうとは思っていなかったことも大きいかもしれません。
キャピタルゲインの最初の使い道は「エンジェル投資」でした。知り合いの会社に投資したいと思ったことがきっかけで、現在は2社ほど投資させてもらっています。そのくらいから、限りある人生のなかで「面白いことに関わるチャンス」にお金を投じよう、と思うようになりましたね。
そのような想いもあり、ずっとやってみたいと思っていたカフェ経営への挑戦も始めました。当時、契約周りや店舗改装に大きな資金が必要だったため、それに一部のキャピタルゲインを費やしました。今は本業にコミットしながら、マインドシェアの20%ほどをカフェに割きつつ仕事をしています。
Bさん:私も淡々としていましたね。大きな買い物をすることもなく、思ったよりも舞い上がらないものだな、と感じていました。
というのも、私はキャピタルゲインを得ることで金銭感覚がこれまでとズレてしまわないかなとずっと危機感を持っていたんです。そのため、キャピタルゲインの額がある程度想像できるようになったころから、生活が変わってしまわないように……と意識を強めていました。
使い道については、大きく分けて3つあります。1つ目は、個人で再投資に回しています。基本的には投資信託なので特別なことはあまりしていません。2つ目は、実家のリフォーム費用に充てました。先ほど家族にはSOのことを伝えていないとお話ししましたが、うっすらと何か感じていたようで、「実家のリフォームをすることになったんだ〜」と無言の圧力がじわじわあったんです(笑)。結果的にすごくいい親孝行ができました。
そして3つ目が、大学院への進学でした。優秀な同僚たちを見ているうちに「人生のどこかで、きちんと学び直す機会がほしい」と思っていたんです。「社会人になってからの入学は、あまり得るものがない」と話す人もいますが、それこそ大学へ行ってみないとわからないじゃないですか。SOのおかげで金銭的にも多少の余裕ができたので、予備校に通い、受験を経て、現在は会社員と大学生の両輪生活を始めています。

Cさん:私はみなさんとは少し違っていて、行使をするときはとても動揺していました。正直言って、めちゃくちゃ吐きそうでしたね。
私は上場後に比較的すぐに株を売却できるタイミングがあったのですが、これまで株の売買なんてしたことがありませんでした。何株を売ったらいいのかもわからない……でも先延ばしもよくない気がする……。そんな状況でしたので、同僚に相談しながら、なんとか売却を進めていきました。初めて売却するときはなかなか眠れず、導眠剤を飲んだりしたほどです。無事に売れてホッとしましたけれど。
私は何かやりたい事業や夢があるわけじゃなかったので、キャピタルゲインは家族や周りの人たちのために使うことにしました。子どもにはインターナショナルな教育をしてあげたいと思っていたので、学校選びはもちろん、通いやすい場所へ引っ越したりしましたね。
さらに、エンジェル投資とまではいきませんが、業界への還元という意味で、私自身もお世話になった勉強会やカンファレンスへ個人スポンサーとして多めに出させてもらったりしています。あとは新技術系のベンチャーファンドへ出資したり、常に寄せられる銀行や証券会社からの営業を軽く見ながらちょこちょこと運用したりもしていますね。
Dさん:私はSOの行使や株式を売却するのは初めてでしたが、会社のサポートがとても手厚かったおかげで、手続きはとてもスムーズに進めることができました。そのため、気持ちも落ち着いていましたね。一方、自分はすぐに一喜一憂してしまう癖があるので、とにかく心を落ち着けて「これは本来は手元になかったはずのお金だから見ないように」と、自分に言い聞かせていました(笑)。
キャピタルゲインの使い道ですが、特別なことはそこまでしていません。再投資に回したり、家族のために使ったり、住宅購入のローン返済に充てました。あとは当時、ノリでスキューバーダイビングのライセンスをとったので、そのための費用に使ったりしていました。今はそれほど潜らなくなってしまいましたけれど(笑)。
質問3:株は全部売り切った?それとも持ち続けている?その理由は?

Aさん:私は今も在職中で、社内や事業の動きを見ていることもあって3〜4割の株は売らずに持っています。ですが、もしも何か自分がフルコミットしたいものを他に見つけたときには、すべて売却してそっちに充てさせてもらおう、と考えています。
生活しているなかで株価を意識することはそれほどないですね。市況の影響は避けられませんし、株価が下がったとしても長い目で見れば挽回されていくものです。なので、「今が買い」「我々はこんなもんじゃないでしょう」と思っているところがありますね。
Bさん:ざっくりとまだ3〜4割くらい株を残していますね。私は退職していますが、何より今でもサービスが好きですし、つながりを持ち続けたいという想いが強いんです。少なくとも人生の一定期間を賭けた会社なので、応援しつづけたいと思っていますね。
株価変動については、上場して間もないころは、株価が下落すると「何日分の給与が飛んだんだ…?」と計算してしまって落ち込んだり、逆に高騰したときは「今日は働かなくていいんじゃ?」と盛り上がったり、忙しかったですね(笑)。でも今はまったく気にならなくなり、そのまま塩漬けにしています。
Cさん:私も株は一部残したままにしています。理由は、自分自身が携わった大きなプロジェクトの行く末を見届けたいという想いがあるからです。まだ結果が出ていないので、今後それが成功または失敗したときに、すべてを売ろうかなと思っていますね。もしくは、手持ちの現金がピンチになったときでしょうか(笑)。

Dさん:私はすべての株を売却したのですが、そう思い切れたのは「株に意識を持っていかれたくなかった」という気持ちが大きいからかもしれません。私は株価の上下によって、普段の行動が強く左右されるタイプなんですよね。細かなお金がどうでもよく感じるようになっていく、というか。1円下がったら「ここで1,000円を節約してもしょうがないな」などといった感じです(笑)。
私の場合、仕事に集中したかったんですかね。将来の株価はどうなるか読めないですし、どうなっても後悔しないなと思えたので踏ん切りました。
質問4:「SOをもらったけれどあまりよくわからない」という人へアドバイスするなら?

Aさん:結局のところ「自分次第」というひと言に尽きると思います。SOで大きなキャピタルゲインを得るには「企業価値を上げること=お客さま(ステークホルダー)との関係をどう良くするか」にかかっています。非常にシンプルで、自分の心持ち次第でどうにでもできることなので「あなた次第ですよ」とアドバイスするかもしれません。
現金としての報酬にはもちろん魅力はありますが、SOを導入する会社はもっと増えていいと思っています。私自身、それによって仕事へのモチベーションにつながったり、会社の経営に興味を持つきっかけにもなったり、働き方が変わったりしたことがよかったと感じているからです。もっと多くの会社に広がってほしいですね。
現職では、株の基礎知識を学べる社内研修があり、また、行使・売却・確定申告などに必要な手続きを手厚くサポートする体制が整っているので、そういったものがセットになっているとなおよいですよね。スタートアップでSOがもっと当たり前になれば、業界全体に還元したいと考える人も増えるんじゃないでしょうか。
Bさん:今振り返ってみると、SOは働くモチベーションにつながっていたようには思いますが、当時はそこまで実感がありませんでした。あまり気にせずに、眼の前のことにコミットしていたら結果がついてきた、という感じです。Aさんの言うとおり、私もSOを積極活用するスタートアップは増えてほしいと思っています。

Cさん:最近では、私の周りでもSOの話題を耳にすることが増えましたけれど、「そもそもどれくらいの価値があるのか」「いつ売れるのか」「行使と売却の違いはなにか」などがわからない人はまだまだ多いです。
せっかくSOを持っているのに、「知識がないために行使や売却のタイミングを逃した」「気づけなかった」となるのは非常にもったいない。私も、当初は何もわからないままSOを受け取っていましたが、株式報酬を担当するチームがしっかりと教育してくれたおかげで今があります。特に創業期のスタートアップでSOをもらうことになった人は、勉強しておいて損はないと思います。
Dさん:私もSOに関する相談をよく受けていますが「行使価格とはなんですか?」「すぐ売れないのはなぜか?」など基本的な内容に対する質問が多いです。それくらい、一般的な社員のSOに関するリテラシーは高くないのだと思っています。
私自身も、SOについては「なんですかこれ?」くらいの知識からスタートしました。Cさんと同じ話になりますが、自分で調べてみるなど少しずつでも知識をつけていくことは大事だと思います。やればやるほど視野が広がりますし、経営視点も身について仕事の解像度も上がるのでおすすめです。周囲にSOを行使した経験がある人がいれば、話を聞いてみるのも良いかもしれません。
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