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リブセンスが導入した“国内初”の報酬制度に込められた、18年間変わらない想い

株式会社リブセンス 代表取締役社長 / 村上 太一

2006年の創業から18年──。

「LIVE 生きる」「SENSE 意味」という2つの言葉をかけ合わせた社名を持つ「リブセンス」は「幸せから生まれる幸せ」という理念を掲げ、創業から一貫して人生における「選択」をサポートする事業を展開してきました。

創業からわずか5年で上場を果たし、“史上最年少上場”社長として注目された村上太一さん(ちなみに、この記録は現在も破られていません)。

今回は、2024年2月にリブセンスが導入した国内初*1となるスキームを採用した退職後も保有可能な譲渡制限付株式制度「リブシェア」の話を軸に、リブセンスという企業、そして村上さんが経営者として変わったこと、変わらないことをうかがっていきます。

*1 2024年2月20日時点、リブセンス調べ

村上 太一(むらかみ・たいち)リブセンス 代表取締役社長

1986年、東京都生まれ。両祖父を経営者に持つ家庭に育ち、小学生時代から将来の夢は社長になること。早稲田大学在学中にビジネスプランコンテストで優勝した後、リブセンスを創業し代表取締役社長に就任。2011年12月(25歳1ヶ月)に東証マザーズ上場(現:東証グロース市場)、翌年10月(25歳11ヶ月)には東証一部(現:東証プライム市場)に市場変更を果たす(ともに史上最年少記録を更新)。

宮田 昇始(みやた・しょうじ)Nstock 代表取締役CEO 

2013年に株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2015年に人事労務クラウド「SmartHR」を公開。2021年にはシリーズDラウンドで海外投資家などから156億円を調達、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。2022年1月にSmartHRの代表取締役CEOを退任、以降は取締役ファウンダーとして新規事業を担当する。2022年1月にNstock株式会社(SmartHR 100%子会社)を設立。株式報酬のポテンシャルを引き出すメディア「Stock Journal」を運営している。

世の中に幸せな人を増やしたい。幼い頃から「起業」一直線

宮田 昇始(以下、宮田):まずは、いまのリブセンスさんの事業について教えていただけますか。

村上 太一(以下、村上):私たちのメイン事業は3つあります。

求職者と求人のミスマッチをなくすアルバイト求人サイト「マッハバイト」、転職における情報の非対称とミスマッチを解消する口コミ付き転職サイト「転職会議」、転職のプロセスから不要な要素を取り除き、透明化するITエンジニア限定の競争入札型転職サービス「転職ドラフト」です。

ほかにも、挑戦することが好きなので、これまでたくさんの新規事業を立ち上げました。選択と集中により譲渡した事業もありますが、現在は収益の柱となる事業が3つある状態です。

宮田:ちなみに、どれくらい新規事業をやってこられたんですか?

村上:20……もっと? 30くらい。

宮田:30?! すごいですね!

村上:ありがとうございます! ただ実は、これらを貫く私たちの事業理念は創業時からまったくブレてないんです。

社名のリブセンスでもある「生きる意味」ってなんだろうと考えたときに、誰もが幸せに向かって生きているな、と思ったんです。

そのためには「最適な選択を妨げる構造の歪みを社会課題と捉え、テクノロジーで解決する」ことが重要、つまり選択の最適化が人の幸せにつながると考えました。

現在も不動産取引の不透明性をなくす「イエシル」や、紹介型マッチングアプリ「knew」、面接最適化クラウド「batonn」など、キャリアの選択だけでなく新しい領域にもチャレンジしています。

宮田:村上さんは、小学生のころから起業しようと考えていたそうですが、なぜなんですか?

村上:さっきお話しした「生きる意味」です。誰かに喜んでもらえるとうれしいので、たくさんの人を幸せにできたらいいな、と。

宮田:えぇ、そんな幼い頃から(笑)

村上:あとは育った環境の影響が大きいですね。父方の祖父も母方の祖父も経営者で、社長がすごく“かっこいい”と思っていて、幼い頃から社長になると決めていました。

宮田:実は僕も祖父が2人とも事業をやっていましたが、学生の頃にビジネスモデルを考えるなんてしたことはなかったなぁ。

村上:早く起業したくて仕方なかったです。大学の付属高校に通っていて大学受験がなかったので、高校生のときに起業後を見据えて簿記2級やシスアドの資格を取ったり、起業準備と両立できそうな学部を選んだり。そして、大学1年生のときに起業しました。

宮田:仲間はどうやって集めたんですか?

村上:高校時代の友人と、周りの友人たちに「あなたより優秀な人を紹介して」と話してつないでもらい、4名でスタートしました。

お金より大事なことは「思い」。その一心で上場まで駆け抜けた

宮田:もう1つ、創業時のお話を聞いてもいいですか? 当時はまだ日本のスタートアップエコシステムが、いまほど発展してなかったと思いますが、お金ってどうされたんですか?

村上:思い返すと我ながらよくやれたなぁと思うんですが、資本金300万円、資金調達ゼロで上場したんです。

宮田:え? でも融資とかは受けられていますよね?

村上:いえ、借り入れもゼロ、資金調達ゼロなんです。

宮田:……ハンパないですね!

村上:しかも、創業時の完全成果報酬型のアルバイト求人事業(旧「ジョブセンス」、現在の「マッハバイト」)って、やってみないと、どれくらいで売り上げが立つかもわからないビジネスモデルだったんですよね。

当時は、SEOで集客する方法もまったく知らなかったので、がんばってテレアポして企業から求人を集めます、がんばって求職者も集めます、という状態で。

いまはもう時代に合わないと思いますが、当時は学生インターンに無給で手伝ってもらったり、創業メンバーが強い思いでやってくれたり。友人たちに支えられて、だんだん給与を払えるようになっていきました。

創業当初は本当にみんなで事業を成功させて、幸せな人を増やすんだという「思い」だけでやっていましたね。

宮田:ちなみに、外部からの資金調達をしてないと、ストックオプション(以下、SO)とかの情報が入ってこない気がするんですが、SOは出されていましたよね?

村上:SOは上場がほぼ決まったあとに、全従業員に付与しました。

経営について勉強するなかで、SOの知識も身につけていました。

ただ、これはNstockさんの方針と逆行しちゃう発言なんですが、SOで仲間を集めるのはなんかイヤだったんですよ。当時は世の中全体を知らなかったし、「スタートアップってそういうもんじゃねえだろ? 思いに共感してがんばるんだ! 夢だろ!」みたいな(笑)。

いまはまったくそう思いませんし、スタートアップ全体のカルチャーの変化を感じていますが、当時はSOとか株とか上場が……みたいな話をするのはダメ、くらいの感覚で。大事なのは、そんなことじゃない、社会に与える事業のインパクトだ!と本気で思っていました。

ただ、上場がほぼ決まって、社員に金銭面でも恩返ししたいと考えて、全従業員にSOを付与することにしました。

宮田:へぇ。たしかに当時はスタートアップのカルチャーがいまとはぜんぜん違いましたよね。

上場前っていうのは、N−2期とか、N−1期*2とかのタイミングですか?

*2 IPO準備のスケジュールは証券取引所の上場審査に申請する決算期を申請期(N)としてとらえ、その直前の期をN-1期、直前前期をN-2期というように表現します
申請期・・・N期(エヌ)
直前期・・・N-1期(エヌマイナイスイチ)
直前々期・・N-2期(エヌマイナスニ)
直前々々期・N-3期(エヌマイナスサン)

村上:本当に直前です。承認が得られる6ヶ月前くらいでしょうか。

宮田:それは、けっこうギリギリですね。

村上:SOを付与できるギリギリのタイミングでした。しかも簿価純資産法*3で付与してるんです。

*3 簿価純資産法とは、会計上の純資産額に基づいて1株当たり純資産の額を計算する⽅法

宮田:なるほど。外部調達をしていなかったゆえに、上場直前でもかなりいい条件でSOを出せたんですね。

村上:実際に億万長者も生まれました(笑)。

選ばれ続け、愛され続ける企業を作るために必要な制度「リブシェア」

宮田:ここまでの話を聞くと、思いが一番大事!という考え方から、2024年の2月から導入されている「リブシェア」はかなり思想の変化があったように感じるのですが、その変遷についても教えていただけますか?

村上:私自身は上場しても、ラーメンにチャーシューがトッピングできたら幸せだったし、冷蔵庫もないワンルームに住んでいて、あまりお金に関心がなかったんです。

ただ、結婚したり子供が生まれたりするメンバーが出てくると、たしかにお金は大事だよね、と考えるようになって。

上場時に全従業員にSOを付与したように、会社で得た利益や社員のがんばりがきちんと還元されるようにしたいという根底の考えは、当時から変わりません。

いまの時代にあった報酬制度によって、社員のエンゲージメントを高め、社員とともに会社が成長することを目的に作ったのが「リブシェア」です。

宮田:「リブシェア」について、くわしく教えていただけますか?

村上:はい、社員に説明した資料を使ってお話しさせてください。

「リブシェア」は5年間の譲渡制限期間を設けた株式(RS)を社員に付与する制度で、大きな特徴は3つです。

  • 入社時には全社員*4 に譲渡制限付株式(RS)を一律付与すること
  • 会社の利益の一部を毎年社員に還元すること
  • 退職後*5 も継続して譲渡制限付株式(RS)を保有可能なこと
リブシェアの目的
*4 勤務地、職務内容、勤務時間を限定しない無限定正社員が該当します
*5 退職後の保有については、一部例外条件があります

宮田:上場後の株式報酬を設計する場合、役員向けには譲渡制限付株式(RS)、社員向けには譲渡制限付株式ユニット(RSU)を用いる設計が多いように感じます。社員向けにRSを使うのはめずらしいですね。

村上:ここは「幸せから生まれる幸せ」をはじめとする、リブセンスの経営思想が反映されているところです。

まず、株を“持っている感覚”が大事だと考えたので、RSUではなくRSにしました。RSであれば株主総会の招集通知が来るし、時価総額も気にするようになります。

経営を “みんなごと”にして、会社に集まる「元気玉」のパワーをどんどん高めたいんです。

譲渡制限期間を5年に設定したのは、創業から5年後に東証マザーズ(現:グロース市場)に上場できたからです。創業〜上場が可能なくらいの規模に成長する時間軸として「5年先の未来」を意識して、事業に向き合おうという思いを込めています。

宮田:加えて、RSは退職時に返却する設計になっていることが多いので、退職しても持ち続けられるのもユニークです。

村上:損失回避効果を利用して、新しいチャレンジを希望する社員を過度に引き止めるようなことはしたくないんですよね。

あとは、私たちはコーポレーションビジョンに「あたりまえを、発明しよう。」を掲げているので、常に新しいことをやり続ける会社でいたいんです。

退職後も保有可能な、こうしたRSのスキームは日本初だと思います。

リブシェアの譲渡制限期間・退職時の扱いについて

最近では、一度退職したのち、戻ってきてくれる“出戻り社員”もいます。

リブセンスは、社員とアルムナイ*6、あるいはアルムナイ同士の関係性が継続することが多いので、人とのつながりの継続や「戻りたい場所」であることも持続的な成長を実現するためには不可欠だと思っています。

*6 アルムナイは英語で「卒業生」という意味を持ち、人事分野では定年退職者以外の退職者を指す言葉として使われている

と、いろいろこの制度を考えた背景はあるのですが、正直、ロジックで導き出したというよりは、私たちが「こうしたい」という気持ちの部分が大きいですね。

宮田:前職と利害が一致していると、転職先で前職のサービスを導入してくれたり、リファラルでいい方を紹介してくれたり、その企業の悪口を言っても言わなくてもいいタイミングで言わないでくれたり(笑)。いい関係を続けられますよね。

でも、なにかで利害を合わせないとなかなか難しいので、株式が退職後も機能するのは、すごくいいと思います。

村上:株式には概念としての“引力”みたいなパワーがあると思うんです。日々の利害関係は完全に一致していなくても、なんとなくつながっているような。

宮田:村上さんの本音を聞きたいので、あえてこういう質問の仕方をするのですが、僕は自分だけがお金持ちになるのは気まずいなと思うんです。もし経営者だけが富を手に入れて、どんどん社員のみんなと金銭感覚が合わなくなっていくのはさみしいと感じるので、できるだけ分け合いたいな、と。

村上:たしかに「経営陣と俺たちは違う」と思われてしまうのはイヤですよね。

上場したあと、リブセンスの株式で大きな利益をあげた社員の結婚式に呼んでもらったのですが、すごく豪華でうれしかったんです。お金があると、こうして人生の選択肢が広がるんだなと。

常にリブセンスにはフィロソフィーである「幸せから生まれる幸せ」がベースにあるので、今回、それを体現できる制度を導入できたことは“自分たちらしい”と思っています。

宮田:リブセンスさんには創業時から大切にされている思想がすごく強く根付いているんだなと感じましたが、創業から18年経って、変わったことってほかにありますか?

村上:最近は、自分自身をあえて“無力化”することをすごく意識しています。宮田さんの「権限委譲する技術」のブログも参考にさせてもらってます。

宮田:おぉ、ありがとうございます。

村上:創業時は自分の会社だって気負ってしまうところもありましたが、いまは私以上に優秀なメンバーがたくさんいるので、経営会議などの大事な意思決定の場でも「自分が間違っている可能性」を考えるようにしています。

そうやって、いろんなものを周りに渡していくと、アルムナイも含めてリブセンスという企業の存在自体が、だんだんと社会に融合していく感じがしているんです。

宮田:今日のお話を聞いて、お金より思いが大事だった学生起業家が、18年の時間を経て、サステナブルな経営を志す、すごく成熟した経営者になられているんだなと強く感じました。とても学びの多い時間をありがとうございました! 長く成長し愛される企業になれるようにNstockもがんばります。

リブセンスからのお知らせ

今回、インタビューに応じてくださったリブセンスさんのコーポレートサイトと採用サイトをご紹介します。ぜひご覧ください。

Nstockからのお知らせ

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(写真:高木成和)

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