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ストックオプションをもらうときに見るべき5つのポイント

ストックオプションの基礎知識

スタートアップへの入社や転職を考えるとき、「ストックオプション(SO)を付与します」と言われると、それだけで魅力的に感じるかもしれません。しかし、SOは内容次第で「宝の持ち腐れ」にも「大きなリターン」にもなり得ます。条件をきちんと理解しないまま受け取ると、いざというとき期待した価値を得られないことも珍しくありません。

実際、SOの条件は会社によってまちまちで、同じ「0.1%のSO」でもスキームや条件の違いで最終的な手取りが数倍変わることもあります。本記事では、SOを提示されたときに必ず確認しておきたい5つのポイントを解説します。

1. スキームは何か? ── 税制適格SOが最も有利

SOには複数のスキームがあり、どれを採用しているかで税負担が大きく変わります。

最も有利なのが「税制適格SO」です。一定の要件を満たせば、行使時には課税されず、株式を売却したタイミングで譲渡所得(約20%)として課税されます。一方、税制非適格の場合、行使時に給与所得として最大約55%の課税が発生するため、手取りに大きな差が出ます。たとえば、SOの利益が3,000万円だった場合、税制適格なら手取り約2,400万円ですが、非適格では約1,350万円まで減る可能性があります。同じSOでも1,000万円以上の差がつくわけです。

もうひとつ注意したいのが「有償SO」のケースです。有償SOは取得時に一定の金額を払い込む代わりに税制上のメリットが得られるスキームですが、業績条件が付いていることが多いです。問題は、その業績目標が現実的かどうかです。「売上がxx年でxx倍」のような達成困難な条件が設定されていれば、SOが行使可能にならないまま行使期限を迎えるリスクがあります。払い込んだ金額が無駄になりかねないため、目標の妥当性を冷静に判断する必要があると言えます。

2. 経済的な価値はどの程度か?

SOの「個数(株数)」だけを見ても、実はその価値は判断できません。「10,000株分のSOがもらえる」と聞くと数字が大きくて何となくお得に感じますが、その会社の発行済株式総数が1億株なら0.01%に過ぎません。大切なのは、会社全体のなかで自分が持つ割合(持分比率)と、それが現在および将来どの程度の経済的価値を持つかです。

まず、現在の時価総額(直近の資金調達ラウンドの評価額など)をベースに、自分のSOの価値を試算してみましょう。たとえば時価総額50億円の会社で0.1%分のSOを持っていれば、単純計算で500万円分の価値があります(実際は行使価格をコストとして考慮する必要がありますが)。

次に、会社が将来成長した場合のシミュレーションも重要です。仮に時価総額が10倍の500億円になれば、同じ0.1%でも5,000万円になります。もちろんこれは希薄化(追加の資金調達やSO発行による持分の減少)を考慮していない楽観的な計算ですが、SOのポテンシャルを理解する目安にはなります。なお、会社のフェーズがアーリーなほど将来の資金調達による希薄化の影響を受けるので、将来の持分は現在より目減りする前提で考えておくのが現実的です。

提示されたSOの個数(株数)が「全体の何%にあたるか」を会社に確認し、自分なりにシナリオを描いてみることで、SOの価値がぐっとクリアになるはずです。

3. ベスティング条件はもらう側にとって有利な内容か?

ベスティング条件とは、SOが段階的に行使可能になる条件のことです。一般的には「4年間で均等にベスティング、1年のクリフ(最初のSOが行使できるまでの期間)付き」という設計が多いです。税制適格SOの場合、税法上の要件により付与決議後2年間は行使ができないため、実質2年間のクリフが付いていることになります。

ここで注意したいのが、ベスティングの起算日です。最近は入社日やSO付与日を起算日とするケースが多いものの、なかには「上場日」を起算日とする設計も存在します。この場合、上場前にどれだけ長く在籍していてもベスティングは一切進まず、上場してからさらに数年待たないと付与されたSOをすべて行使することができません。初期メンバーとして何年も貢献してきた社員にとって、これはあまり有利な条件とは言えません。

また、クリフの期間が極端に長い場合や、ベスティングの配分が後半に偏っている(最初の2年で10%、残り2年で90%など)場合も、社員にとって実質的に不利な設計と言えます。

確認のコツとしては、「自分がx年後に退職した場合、SOの何%が行使可能になっているか」を具体的にシミュレーションしてみることです。

4. 退職したときの取り扱いは?

スタートアップは人材の流動性が高い世界です。にもかかわらず、「辞めたらSOはどうなるのか」を確認しないまま入社する人は意外と多いのではないでしょうか。

一般的に、退職後のSOの扱いには以下のようなパターンがあります。退職後も権利が確定したSO(べスティング済みのSO)については持ち出せるケース、一定期間(たとえば90日間)のみ行使可能とするケース、そして退職時点で未行使のSOがすべて失効するケースです。

特に注意が必要なのは「退職時に全失効」のパターンです。これは、何年働いても辞めた瞬間にSOの価値がゼロになることを意味します。仮に上場条件(上場しないと一切のSOが行使できない条件)が付いているSOの場合、上場直前(または上場の確度が一定程度高くなった時期)に退職する選択が極めて取りにくくなり、事実上の退職抑止策として機能してしまいます。会社にとっては人材の流動性が滞り、もらう側にとっては「SOによって会社に縛られてしまう」状態とも言えます。

5. 流動性はあるか? ── 非上場時のSOの取り扱い

最後に、1つ前の論点とも関係しますが、「このSOはいつ現金化できるのか?」という問いも重要です。

現在の日本のスタートアップでは、上場して初めてSOを行使・売却できるケースがほとんどです。しかし現実には、上場まで10年、15年とかかる企業も多く、その間SOは「絵に描いた餅」になってしまいます。

確認すべきは、会社が上場以外のイグジットシナリオをどう考えているかです。たとえばM&Aが起きた場合、SOはどう扱われるのでしょうか。買収先の株式に転換されるのか、それとも金銭で清算されるのか。契約書に明記がなければ、最悪の場合、M&A時にSOが無価値になるリスクもあります。また、最近の税制改正により、M&A時も税制適格SOを適格性を維持したまま行使し、株式を売却することが可能になりました。そうした最新のルールがきちんと契約書に反映されているか、も重要なチェックポイントになります。

加えて、近年はセカンダリー取引を検討するスタートアップも増えてきています(SmartHR社の事例find社の事例)。米国ではNasdaq Private MarketやForge Globalといったプラットフォームを通じた未上場株の売買が一般化しつつあり、日本でも同様の動きは徐々に広がっていくと思います。会社がこうした流動性確保の手段を視野に入れているかどうかも、長期的にSOの価値を左右する重要な要素です。

まとめ

SOは「もらえるだけでラッキー」と考えがちですが、中身を見ずに契約書にサインすることはおすすめしません。税制スキーム、経済的価値、ベスティング条件、退職時の扱い、流動性の5点を確認するだけで、そのSOが本当に自分にとって価値あるものかどうかを判断する精度は格段に上がります。

会社にSOの条件について質問することは、決して失礼なことではありません。むしろ、条件を正しく理解したうえで入社を決める人材の方が、入社後にSOがよりインセンティブとして機能すると言えるのではないでしょうか。オファーレターにサインする前に、本記事の5つのポイントをチェックリストとして活用してみてください。

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留意事項

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