1億、2億、2ケタ億──ストックオプションで高額なキャピタルゲインを得た3名の選択と使い道

初めてストックオプション(以下、SO)をもらったときの本音、キャピタルゲインの使い道、SOを行使して手にした株を「全部売るか、それとも残すか?」の葛藤──。当事者たちは何を感じ、どのように判断を下したのでしょうか?
そこで今回は、SOによって高額なキャピタルゲインを得た3名の経験者に突撃。ざっくばらんに、当時の思いやキャピタルゲインの使い道を語ってもらいました。
*キャピタルゲインとは、SOの行使後、株式を売却することで得られる利益のこと
Aさん
創業7年目のスタートアップへ入社。退職後はスタートアップを創業した。SOを行使し、株式を売却したことで得たキャピタルゲインは2億円弱ほど。
Bさん
創業5年目のスタートアップへ入社。退職後は別のスタートアップへ転職した。SOを一部行使し、株式を売却したことで得たキャピタルゲインは10億円後半ほど。
Cさん
創業10年目のスタートアップへ入社。退職後は別のスタートアップに勤務。SOを行使し、株式を売却したことで得たキャピタルゲインは四捨五入すると億単位になる。
質問:初めてSOをもらったとき、ぶっちゃけどう思っていた?
Aさん:私は前職から給与を下げて入社していたこともあり、その補填としてSOを付与してもらいました。当時はSO自体は理解していたものの、その会社でのSOの価値についてはあまりピンときておらず「上場しないと意味がないものだしなぁ」くらいにしか思っていませんでしたね。どちらかというと人生の思い出を作るために入社していたので、SOにあまり期待していなかったのです。
想定外だったのは、上場後すぐに業績が伸び、株価が当初の8倍になったことです。上場時のキャピタルゲインは把握していましたが、「こんなかたちで増えることもあるのか」と驚きましたね。

Bさん:私は以前会社を経営していたのですが、いろいろあってたたむことになり……2,000万円近くの借金が残りました。そのため、前職に入社するときはSOを含めた株式報酬の交渉しましたね。「2〜3年で億単位くらい稼ぎたいです」と具体的に伝えていたくらいです。SOについては「入社時に希望した金額を稼げるくらいにする」と考えていました。
うれしいことに、SOによって入社前に宣言していた金額以上のキャピタルゲインを手にすることができました。
Cさん:私がSOを付与されたのは役職がついたときでした。なので、個数としてはそんなに多くもらっていなかったのです。

以前勤めていた会社が金融系だったのでSOの知識はあったのですが、その価値についてあまりよくわかっていませんでした。当時の本音を言いますと「キャピタルゲインと言えど、外資系企業のボーナスくらいかな」というイメージでしたね。Aさんと同じく、人生の思い出になるくらいこの会社で頑張りたいと思って入社していたので、SOを含む株式報酬はあまり気にしていませんでした。コーポレート部門だったため、上場準備中に社長から「SOはどれくらい上がると思う?」と聞かれることもありましたが、「どうなんでしょうねぇ?」と返していたくらいです(笑)。
SOの価値に実感を持てたのは上場後です。「こんなにも金額が上がるのか」と驚きました。会社の価値についても、短期的な成長視点を持つと同時に、より長期的な目線へのこだわりが強くなりました。
質問:キャピタルゲインの使い道は?
Aさん:私は退職時にすべて売却し、キャピタルゲインの9割を起業資金に費やしました。ディープテック系事業だったので、多額の資金が必要でした。起業時に自己資金を費やしたことで「この事業を絶対に成功させるぞ」という気持ちもしっかり固められました。
残りの1割は家族のために残しました。独り身だったらすべてを起業に費やしていたと思います。実は、キャピタルゲインの一部で別荘をキャッシュで購入していますが……パートナーには何も知らせていません。
Bさん:私は、キャピタルゲインを自分の会社への投資や数十社のエンジェル投資のほか、あえてハイリスク投資にも使っています。

ハイリスク投資に関しては、具体的には、レバレッジをかけてビットコインを大量購入したり、「1ヶ月でどれだけデイトレードで資産を増やせるか」という実験をしてみたりしています。そうやっていろいろな投資による経験をしておきたかったのです。少し前には海外の不動産投資に失敗して大きな損失を出しましたが、その後に別の投資が成功し、無事に資産を増やすことができました。
Cさん:私は退職時にすべて売却し、大半のキャピタルゲインは分散投資に回しました。おもに不動産と米国債、インデックス、日本の高配当株に1/4ずつ分散させています。あとは、少しいい車を買ったり、別荘を買ったりもしました。そのほかは、両親が老後を楽しむための少し大きめのプレゼントなどもしましたね。
質問:「すべて売る」または「手元に残す」と決めた理由は?
Aさん:退職を決めた瞬間に、すべて売却しようと思っていました。そのため迷うことなく退職時にすべてのSOを株式に変えて売却し、行使タイミングがあわなかったものは放棄しました。
すべて売却した理由は、後ろ髪を引かれたくなかったからです。次の会社は大きなチャレンジになると思っているので、お金や時間といったリソースをすべて一極集中させ、全身全霊で頑張りたいと思っていました。とは言え、ときどきは株価をチェックしてしまいますね。そして、私が売却したときより高くなっていると、ちょっと悔しい気持ちになることもあります(笑)。

Bさん:私は4割ほど残していますが、今でも四半期決算のタイミングなどで定期的に売却しています。定期的に少しずつ売ることで、株価の上下に振り回されないようにしているのです。
残した理由は、前職の社長を「この人はもっと大きなことを成し遂げるはず」と信じているからです。社長には尋常じゃないパワーがあるし、闘志のようなものをずっと感じています。その熱量が消えない限りは、長期的に時価総額は上がっていくはずなんです。その熱量に賭けるつもりで今は4割ほど残しています。
Cさん:私の場合、パートナーの強い希望もあり、退職時にすべてのSOを行使し、得た株も売却しました。
SOは、現金化するまでその価値は確定しません。どれくらいの価値になるのかが最後までわからないことに、パートナーは不安がっていました。在職中はお金の扱いをしばらく制限するように言われていたほどです。そういった理由から、一時的にでも現金というかたちで早く目に見えるものにしてあげたい気持ちがありました。そして、退職時にすべて売却して現金化しました。

また、SOは行使から株式に変えて売却するまでに一定期間待たなければならないなどの条件もあります。それらを一度にすべて終わらせておきたい気持ちもありました。再びほしいと思ったら、また買えばいいと思っています。
ちなみに、SOを売却し現金化してからは、パートナーはお金について何も言わなくなりました。
質問:「初めてSOをもらう」という人にアドバイスするなら?
Bさん:株式報酬の交渉に応じる会社ならば、ちゃんとSOの個数ないしは割合を話し合うことも大事だと思います。会社によっては、付与する割合がちゃんと決まっていないところもあり、あとになってから「もっともらえていたはずだった」となることもあります。今はSOに対してピンときていなくても、長く働き続けることでSOの価値が仕上がってくるからこそ、コミットメントの源泉は担保しておいたほうがいいですね。

Cさん:SOを完全に理解するには、その前段にある「株式市場の基本的な構造」から学ぶ必要があります。なので、難しいんですよね。私は株式市場について知っていたつもりですが、入社時に社長から「キャッシュがいい?それともSOがいい?」と聞かれて、すぐに判断できませんでした。
ぶっちゃけ、SOは付与されたあと、行使するまで特に何もすることはありません。できることと言えば、「SOの価値を上げていくこと」「行使するときのオペレーションを理解しておくこと」くらいです。私は関心が低すぎたわけですが、今振り返ると、Bさんが言うようにもうちょっと交渉してもよかったかもしれないと思っています(笑)。
Aさん:SOは難しいですよね。だからこそ、SOについてもっと深く理解したいと思ったら、実際にキャピタルゲインを得たことがある人に具体的な経験談を聞くのが一番です。
個人的には、SOの理解浸透が広がらないのは発行者側(経営者)にあると思っています。まだ日本ではSOに馴染みが薄いからこそ、発行者側は何度もくり返して話をする必要があるはずなのです。今や僕も発行者側ですが、キャピタルゲインの経験を交えて話すようにしています。「こうしたらこうなる」が具体的なイメージにつながるまで、何度もくり返し説明していくつもりです。

