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「貯金はゼロになった」「でも買わない選択肢はなかった」SmartHR初期メンバーが生株を買い、セカンダリー取引で売却するまで

Nstock株式会社 / 高橋昌臣

Nstock株式会社 / 大辻昌秀

「スタートアップ初期メンバーとして生株を取得し、それをセカンダリー取引で売却したらどうなった?」

現在Nstockで働く高橋昌臣と大辻昌秀は、SmartHRの社員番号1桁番台の初期メンバーでもあります。彼らは、SmartHRの立ち上げ期に同社の生株を購入し、同社が2024年7月に実施した資金調達(シリーズEラウンド)のタイミングにあわせて、自身が保有する生株の一部をセカンダリー取引(以下、セカンダリー)で売却したといいます。

高橋と大辻はなぜセカンダリーでSmartHRの生株を売却しようと思ったのでしょうか?ぶっちゃけ、セカンダリーによって得た金額は?退職やFIRE(早期リタイア)は考えなかった?さっそく話を聞きました。

高橋 昌臣(たかはし・まさおみ)
2016年にSmartHRの1人目のカスタマーサクセスとして入社。その後、PMM・プラットフォーム事業に従事したあと2022年1月にNstockを創業。Nstockでは、株式報酬管理サービスのPO/PdMを担当。秋田生まれ、インターネッツと日本語HIPHOP育ち。悪そうな奴とは距離を置いておきたい。

大辻 昌秀(おおつじ・まさひで)
2016年にSmartHRの1人目のセールスとして入社。2019年にSmartHR関西支社を立ち上げた後、2023年7月からNstockにて採用人事を担当。関西エリアを生活拠点として、現在はリモートワークをしている。

SmartHRの成長を確信していたから生株を買うことに不安はなかった、でも…

──まずは、お2人がSmartHRの生株を購入することになった経緯から伺いたいです!

高橋 昌臣(以下、高橋):そもそもの話ではありますが、SmartHRでは創業初期に生株を購入できるタイミングが3回あり、私はすべてのタイミングで購入していました。たしか、初回はサービス公開直後の2016年、2回目は大手が競合として一気に参入してきた2017年、そして3回目が2019年です。ちなみに生株購入というイベントが発生した主な理由は、1回目については「フルコミットではない創業メンバーの持株の一部Exit」、2回目・3回目は「競合サービスが一気に増えたこともあり、キーパーソンを社外流出させないために機会を設けた」と宮田さん(SmartHR共同創業者で現在はNstock代表である宮田昇始)から聞いています。

生株を買うことに関しては、それほど大事(おおごと)にとらえていませんでした。SmartHRのフルコミットの共同創業者2人(宮田昇始と内藤研介さん)は、もともと友人だったこともあり、人柄もよく知っていたので、生株を買うことに抵抗や不安もなかったのです。

また、SmartHRの前に務めていた会社では取締役をしていたのですが、当時は生株を持っていなかったため「今回は!」となっていたところもありました。

写真左から高橋昌臣、大辻昌秀

大辻 昌秀(以下、大辻):僕がSmartHRの生株を購入したのは2017年の、高橋さんの2回目の購入と同じタイミングです。ただ、なぜ買おうと思ったのかははっきりと覚えていなくて(笑)。生株を買うこと自体にあまりピンと来ていなかったものの、「きっと買っておいたほうがいいだろう」と思って買った気がします。

高橋:それ、わかります(笑)。私も何となくではあるんですが「持っておきたい」という気持ちもあったんですよね。とはいえ、当時はまとめて支払える額ではなかったので、1回目は分割払いで購入しました。2回目は1回目よりも株価が上がっていたので自己資金だけでは足りず、妻に借金しました。

大辻:僕も貯金がゼロになりました。それでも「買わない選択肢はない」という思いが強くて。「貯金がなくなって不安だけど、もうこうなったらSmartHRにフルコミットして、会社を大きくするしかないぞ!」と思いましたね。

高橋:そうそう。先ほどお話ししましたが、2回目の購入時は、1回目に比べて株価が上がっていました。これは、会社が成長しているからなんですよね。株価が上がる様子を目の当たりにしていたからこそ、SmartHRの成功に対して疑いもあまりなかったんです。

セカンダリーを決めたのは「SmartHRの役に立ちたいと思ったから」

──SmartHRでは2024年7月に、プライマリーとセカンダリーをあわせて約214億円のシリーズEを実施しています。その際、高橋さんも大辻さんも、生株をセカンダリーで売却していますよね。なぜこのタイミングでセカンダリーをしようと思ったのでしょうか?

高橋:理由は2つあります。

1つ目は、SmartHRの役に立ちたいと思ったからです。僕らが持っている「普通株」は、資金調達時に新株として発行される「優先株」と比較して割安です。SmartHRが新たに発行する優先株と、僕らが持っている割安な普通株をブレンドして買ってもらうことで、より魅力的な投資機会だとシリーズEの投資家に思ってもらえる材料にもなります。

SmartHRは今も急成長し続けているので、株を売らずに持ち続けることで、将来的に株価はもっと値上がりすると思っています。しかし、すでにNstockに転籍している自分が株を持ち続けるよりも、このタイミングで手放すことがSmartHRの役に立つのなら「はい喜んで!」と思いました。

2つ目は、「実際にセカンダリーを体験してみたかったから」です。私たちNstockがセカンダリーをテーマに事業をしている以上、一度は体験しておきたいと思っていました。そんなとき、SmartHRの資金調達前に宮田さんが「自分たちもセカンダリーで売却してみない?」と、私や大辻さんのように生株を持っている人たちに声をかけてくれました。「これはチャンスだ」と思いました。

大辻:ある日突然、宮田さんから「セカンダリーチャンスです!」とメッセージが来たんですよね。そのメッセージを見た瞬間に「面白そう!」「売ろう!」と思いました。あと、僕の場合は、SmartHRで初期から働いてきたことに対する「何かしらの成果」がほしいと思ったこともセカンダリーを決めた理由でした。

──どんな基準で、売る量を決めたんですか?

高橋:セカンダリーを打診された当時は、1株あたりいくらで売るのが妥当かはわかりませんでした。SmartHRの役に立ちたいという気持ちはありつつも「自分がイメージしている株価レンジの最低金額を下回りそうなら売らない」「売っても保有する生株全体の3分の1くらい」とシンプルに考えていました。その後、投資家側と交渉するなかで、1株あたりの価格も明確になっていきました。

価格が明確になってから……売り出す株数を増やしました(笑)。株数を増やした理由は「自分の通帳に、そこそこの金額が一気にドンと並ぶ瞬間を見てみたい」という願望があったからです。

大辻:僕は「価格がいくらだったとしてもセカンダリーで売却しよう」と思っていました。だって、自分が初期から働いている非上場スタートアップの株式を購入し、成長したタイミングで売却して、それで大きなお金が振り込まれる体験なんて、なかなかできることではありません。その体験をしてみたかったということもあり、このタイミングで確実にセカンダリーで売ろうと思っていました。

あと、高橋さんと同じく「そこそこの金額が通帳にドンと並ぶ瞬間を見てみたい」と思っていました。実際に高橋さんとも「◯億円は超えたいよね」と話したのを覚えています(笑)。そこから逆算して、何%くらいでセカンダリーをするかを決めました。

高橋:なんか、銀行口座に9桁って夢がありますもんね(笑)。

──「全部売る」とはしなかったのですか?

高橋:いつか「SmartHRが上場」という一大イベントで、みんなとお祝いしたい気持ちがあるんですよね。なので、全部売ることはしませんでした。SmartHRはもっと大きな会社になると信じていますので!また、今回は事業が始まっていなかったので実現できませんでしたが、次回はNstockのセカンダリー事業を通じて行われることも見越して多めに残しました。

大辻:SmartHRのおかげで今があるので、関わりを持っておきたいという気持ちも強いんですよね。だから、僕も全部売っていません。 SmartHRはまだまだ伸びます!すでに退職した身ではありますが、必要であれば何かお手伝いできればと思っているくらいです。生株が手元にあるうちは、何かあったときに人を紹介するなど、つながりを活かした行動を気持ちよくとりやすくなるんじゃないかとも考えています。

高橋:「これからもSmartHRと関わりを持ちたい」は僕も同じですね。

多額の資金を手にして「退職」「FIRE」を考えなかった理由

──セカンダリーをしてみて、気持ちの変化はありましたか?

高橋:セカンダリーによって資金を手にしてみて「上場したわけではないけれど、ここまで頑張ってきたんだな」と実感する機会になりました。スタートアップが上場するまでの期間が延びつつある今こそ、セカンダリーのようにストックオプションや生株などを換金できる機会があることは、社員の立場からすると自分の頑張りが報われたように感じますよね。

今回のセカンダリーではサービス開始初期からの関与が予想以上のかたちで報われることとなりましたが、この成果は決して私一人の力で成し遂げたものではありません。サービス開始初期から苦楽を共にしてきた仲間たち、そして日々情熱を持ってチームを支えてくれているメンバーたちなど多くの人々との協力があってこそ、ここまで来られたのだと実感しています。

だからこそ、この経験を活かし、Nstockのセカンダリー事業をさらに発展させていきたいと強く感じました。売却後のサポートも含め、社員のストックオプションを適切なタイミングで換金できる仕組みを整えることで、チームの努力が正当に報われる機会を増やしていきたい。その想いが今、より一層強くなっています。

大辻:同じくですね。僕も「こういった体験ができる世界を作っていきたい」という思いを新たにしました。ある程度の資金を手にしたおかげで「生活のために働く」というプレッシャーから少し解放されるところもあるので、自分のやりたいと思う仕事によりコミットできる環境が整った気がしています。

私は新卒から約20年間ずっと営業職のキャリアでしたがNstockに入社して初めて人事の仕事にチャレンジしています。特に採用の観点だと、超初期のスタートアップへの転職は「会社が潰れないかな?」「給与は大丈夫かな?」などの不安が多いこともわかります。私もSmartHRに入社する前は、リリースしてまだ1ヶ月で機能も非常に少なく、お客さまの課題をすべて解決できないサービスを担当していたことがあります。正直「売れなかったらどうしようかな...…」と不安でした(笑)。

でも、その考えは他責で、仮にどの会社に入社したとしても「自分自身がサービスを良くするための行動をして、もっと売れる状態にすればいいだけだ」と考えを自分ごととして改めることで不安が解消されました。SmartHRではその結果、今があり、銀行口座に今まで見たことがない桁の数字が並んだわけです(笑)。SmartHRへの転職が人生を大きく変えることになりました。

──セカンダリーによって億単位の資金を手にしたら、金銭的にも自由になるので退職やFIRE(早期リタイア)を考える人が出てしまうと懸念する企業が多いですが、その点はどう感じましたか?

大辻:すでにNstockで働いていたり、先ほど話したようにやりたいことがあったので、退職やFIREはまったく考えていませんでした。僕の場合、FIREをしたら暇すぎて逆に時間をムダ遣いしてしまいそうです。友人や仕事仲間は働いているなか、自分だけ何もやっていないとなると……置いてけぼり感もあって寂しくなりそう。そういった理由もあり、仮にFIREしても、絶対にすぐ仕事したくなりますね(笑)。ただ、もし今の年齢が60歳だと仕事を辞めているかもしれません。

また、僕は人事として今回のようなセカンダリーの経験を多くの方に知っていただいて、スタートアップへの関心を持ってもらい、「私もスタートアップで働きたい」と思ってもらえる方を一人でも増やしたいという気持ちもあります。これも退職やFIREを考えていない理由ですね。

高橋:退職やFIREは、その人の役割や成長具合など、それぞれの置かれた状況によって考えが異なるところかもしれないですね。バリバリと働きたい人であればそのまま在職し続けるかもしれませんし、金銭的な余裕ができたことでいったん今の役割を退くという人もいるでしょうし。幸いにして私は次のチャンスをもらえましたが、もしNstockを立ち上げていなかったら、SmartHRでの勤務はちょうど入社9年目(2024年当時)になるころでした。そうすると、きっと会社の成長と自分の役割が合わず、一度キャリアを見つめ直して次へ進む決意をしていた可能性も高かったと思います。

高橋と大辻が実際手にした金額は?結果的に生株はどれくらい売った?

大辻:「セカンダリーをしてみて、気持ちの変化はあったかどうか」の質問に続く話なのですが、もう1つ挙げるとするならば、これまでは金銭的な余裕がないために諦めてきたことが「できるようになる」ので、プライベートでの悩みが一気に増えました。僕は今、やりたいことが山積みで困っています(笑)。

高橋:お金を理由に選べなかった・選ばなかった選択肢を選べるようになって、逆に悩みが増えますよね。例えば「子どもにはさまざまな体験をさせたいと思っているけれど、何をさせようか」など。

しかしながら、ご存知のとおりですがセカンダリーに限らず、株式を売却した際には所得税が15%、住民税が5%、さらに復興税が0. 315%が加わり、合計20. 315%の税金が課税されます。私の場合、今回のセカンダリーで◯千万円以上を支払うことになっています。セカンダリーによる株式売却で得た資金が着金された翌年3月の確定申告で支払わなければならないので、得た資金を投資に回すことにしました。

大辻:僕も◯千万円以上の税金を支払う予定ですが、確定申告までの期間中に投資に回すのはいいやり方ですね!僕なんて、セカンダリーによる株式売却で得た資金が着金される前に車を買ってしまいました。

高橋:着金前なのに!資金調達と同じく、実際に着金されるまではどうなるのかはわからないので、大辻さんの真似はおすすめしません(笑)。

──確かにおすすめできない(笑)。そして最後の最後で申しわけないのですが、結局のところ、お2人はどれくらいの生株でセカンダリーをしたのでしょうか?そして、さらっと「9桁の数字」と話していましたが、具体的にどれくらいの金額を手にしたのですか?

高橋:当初は3分の1だけ売るつもりでしたが、最終的には……!この続きは、3月15日に開催されるスタートアップキャリアフェア「Startup Aquarium 2025」の「スタートアップ初期メンバーのストックオプション報酬のリアル」というトークセッションでお伝えします!

大辻:かなり具体的にお話しするつもりですので、ぜひ!

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