友人との起業はうまくいくのか?株は47.5%ずつ?SmartHR共同創業者たちのぶっちゃけトーク
株式会社SmartHR 共同創業者 / 内藤 研介

友人と起業するのはやめたほうがいい。
これは、起業時によく耳にする意見の一つです。はたして、友人との起業は本当にうまくいかないものなのでしょうか?
Nstock代表の宮田昇始は、友人とともにSmartHRを共同創業しました。同社は2024年3月に、前年比50%の成長でARR(年商換算のリカーリング収益)150億円超えを発表、同年7月には約214億円のシリーズEラウンドも実施しています。
今回は、Nstock代表でSmartHRの創業者でもある宮田と、SmartHR共同創業者であり現在は同社でエンジニアとして働く内藤研介さんによる対談をお届けします。友人と起業するときに意識すべきことは?株のシェアはどう話し合うべき?……なによりも、宮田と内藤さんはSmartHRを共同創業してみてどうだったのか?などを伺いました。
内藤 研介(ないとう・けんすけ) SmartHR 共同創業者
カリフォルニア州立大学でコンピュータサイエンスを専攻し卒業後帰国。SIerに勤務し、メッセージングミドルウェアや分散データストアの研究開発、金融系のプロジェクトで開発・設計を担当。6年ほど勤務し、宮田昇始とともに株式会社KUFU(現SmartHR)を創業。2023年10月に取締役と同時に監査等委員会委員長(常勤) 兼 指名委員会委員を退任し、現在はエンジニアとしてSmartHRの新規事業の開発に携わる。
宮田 昇始(みやた・しょうじ) Nstock 代表取締役CEO
2013年に友人と起業。2年間で10回以上の失敗を経て、2015年に人事労務クラウド「SmartHR」を公開。2017年に社名を「株式会社SmartHR」に変更、2021年には海外投資家などから156億円を調達しユニコーン企業に。2022年にSmartHRの代表を退任し、自身が感じたスタートアップエコシステムの課題を解決するための新会社「Nstock株式会社」を設立。
共通していたのは「代表作と言えるプロダクトをつくりたい」
──本日のインタビューでは「友人と起業しないほうがいいのか」をテーマに、実際に友人同士で起業した例として、内藤さんと宮田さんにSmartHR(当時はKUFU)創業から現在にかけて振り返ってもらいたいと思っています!
宮田 昇始(以下、宮田):たしかに、よく「友人と起業しないほうがいい」と言われますよね。そしておっしゃるとおり、僕らは友人でありながら共同でSmartHRを創業しました。この経験を振り返り、その良し悪しについて話してみましょうか。
……なので、僕から聞くのはちょっと変な感じなのですが(笑)。初めて内藤さんのことを知る読者の方もいらっしゃると思うので、まずはなぜSmartHRを共同創業しようと思ったのかを教えてください。

内藤 研介(以下、内藤):変な感じですね(笑)。
きっかけは宮田さんからのFacebookメッセージでした。「起業を考えている」「エンジニアを探している」という話から、自然と「一緒にやらないか?」という流れになったと思います。
このときの僕は、ちょうど次のキャリアを考え始めたタイミングでもありました。新卒入社した会社に6年ほどいるなかで、仕事の要領もつかめてきて「このまま勤めるとこういったキャリアになりそうだ」と具体的なイメージもわかり始めていて……。「このままでいいのかな」と考えていたところ、独立する人たちの姿を見て、自分もやってみようかなと考えていたんです。でも、宮田さんからFacebookメッセージをもらって、友人と会社をつくるのも面白そうだと思ったんですよね。そして、共同創業することにしました。

ちなみに以前勤めていたのはIT系コンサルティング会社で、僕はおもに地方銀行向けの担保管理のシステムや証券系の会社向けの業務システムの開発をしていました。
宮田:「創業して間もないスタートアップに転職する」という選択は考えなかったんですか?
内藤:選択肢にはなかったですね。そもそも、2012〜2013年当時は、今ほどスタートアップという言葉は使われていませんでした。独立しようと考えていたのは「スタートアップを立ち上げる」ではなく、会社の看板がない状態でどれくらいできそうかを試してみたかったからでした。自分の幅を広げるための選択をしたかったので、「個人がいい」などのようなこだわりもなかったんです。ただ、代表作と言えるものをつくりたいという強い気持ちだけはありました。
宮田:共同創業することへの不安はありましたか?
内藤:不安はなかったですね。宮田さんとは音楽や食事の好みもあっていましたし、僕の妻と同じ出身地だったりして、出会ったころから親近感がありました。「面白い人」という印象もありましたね(笑)。

宮田:恥ずかしい(笑)。僕も、共同創業することへの不安よりも「自分たちの代表作となるプロダクトをつくるぞ」という気持ちのほうが強かったですね。
当時は「ベンチャーキャピタル」という言葉だけ知っているくらいで、銀行からの借入れも漠然と怖いイメージがあり、資金調達も考えていませんでした。なので、スタートアップとして会社を大きく成長させていこうという考えもあまりなかったのです。
僕のイメージとしては、15人くらいの組織規模で楽しく働ける会社にできたらいいなぁと思っていたくらいです。内藤さんはどうでしたか?
内藤:宮田さんと同じく、会社を大きくしていくつもりはそんなにありませんでしたね。みんなでワイワイと楽しく、面白いプロダクトをつくること。それが話題になればいいね、という感じでした。
宮田:そういえば、映画「ソーシャル・ネットワーク」を一緒に観に行ったよね?僕はあの映画でのプロダクト開発シーンや、Facebookが流行っていく過程を見て、すごく眩しく感じたのを覚えています。
内藤:たしか、新宿ピカデリーで夜に観たんですよね。「ソーシャル・ネットワーク」は、カリフォルニアの当時の大学生ノリが懐かしかったことと、本気で遊んで、プログラミングによって周囲を驚かせ、大きな影響を与えているシーンにしびれました。でも、誰と一緒に観たのかはぜんぜん覚えていない!
宮田:ヒドイ。
友人と起業するのはアリ?ナシ?
──お二人は「友人との起業」についてどうお考えですか?
宮田:僕は「友人との起業はむしろいい」と考えている派です。親しい間柄である友人と起業したほうが、何でも言い合えると思っているんです。緊張感がある間柄だと、会社にとって悪いニュースを共有するのにも躊躇して、対処が後手に回ってしまう可能性が高い。
とはいえ、共同創業する相手を選ぶポイントも重要です。内藤さんはこれまでを振り返ってみて、共同創業する相手はどんな人がいいと考えていますか?

内藤:大前提として「一緒にいて苦じゃない人」がいいですよね。先ほどもお話ししましたが、宮田さんとは音楽や食事の好みも合っていましたし、要するにバイブスが合っていたんですよね。共同創業する前に、週末に集まってWebサービスやアプリケーションをつくるプロジェクトも一緒にやったことがあったので、働くイメージが具体的になっていたこともよかったのかもしれないです。
宮田:よく言われる話ですが、出張で新幹線を使って移動するときに隣の席に座っていても苦じゃない関係性が好ましいですよね。そういった時間の雑談から、経営をよりよくするアイデアが生まれたりもします。
内藤:そうですね。もう1つ加えるならば、自分とは何か違う部分を持っていて、なおかつ、その違いを認められる人もいいですね。
宮田:たしかに。「違い」という点では、僕らの場合、お互いの役割が異なっていたのもよかったなと思います。
SmartHRの開発をスタートしたときは、フルタイムのメンバーは僕と内藤さんの2人だけでした。僕は今でいうPMやPMMのようなキャリアで、内藤さんはエンジニアだったのです。そのため、基本的にはコードを書くのは内藤さんの仕事、それ以外は宮田という役割分担でした。ただ、ユーザーヒアリングだけは2人で一緒に行っていましたね。
内藤:そうでしたね。ローンチ後は、宮田さんは営業や請求書対応もやるようになり、僕はコードを書きながらチャットでのカスタマーサポートのような業務も担当していました。懐かしいですね。
創業者2人の株はちょうど半々?株を47.5%ずつにした理由
──お二人の株のシェアについても記事にしたいのですが……聞いても大丈夫ですか?(笑)
宮田:大丈夫ですよ(笑)。僕らの場合、プロダクトづくりには謎の自信があったものの、会社経営に関してほとんど理解しないまま起業していました。そのため、株についてもどんな意味があるのかをちゃんとわかっていなかったですよね(笑)。創業時は僕と内藤さんのフルタイム2名と、パートタイムで手伝ってくれていた友人でデザイナーの白坂 翔さんの合計3名だったので、株もシンプルに3等分すればいいのかなと考えていました。株を分けるというより、出資金を同じ金額だけ出すような感じでした。
その考えが変わったのは、創業から2年ほど経ってから参加したアクセラレータープログラム「Open Network Lab」です。創業してしばらくの間は受託開発で食いつないでいたのですが「このままではうまくいかない」と感じるようになり、参加を決めたのです。一度目は落ちてしまい、二度目のチャレンジでギリギリ合格したんですけれども(笑)。

Open Network Labに入る条件に、フルコミットするメンバーの2人が株の大半を持っている状態にするというものがありました。そこで、白坂さんの株を5%だけ残してもらって、僕と内藤さんが47.5%ずつの株を持つかたちにしたのです。
内藤:あとから知ったのですが、我々のように創業者がまったく同じシェアにするケースはめずらしいんですよね。代表1人が株の過半数を持っているのが一般的で、シェアが半々に近いケースでも6:4にしたり51:49にしたり。そして多くの方がご存知のとおり、株のシェアは事業になにかあったときに揉める要因にもなります。
宮田:僕らの場合は、めずらしいくらい揉めていないよね。内容は覚えていないけど、10年で2回くらいしか揉めた記憶がない。
内藤:僕は宮田さんのいつもほんの少し、1〜2分だけ遅刻するクセを怒ったのだけ覚えてますね(真顔)。
と、今のは冗談ですが、我々の場合は結果として会社がうまくいったから揉めなかったという話なので、一般的にはあまりおすすめする考え方ではないですね(笑)。
取締役を退任後にやりたかったことは「エンジニアに戻りたい」
──SmartHRがユニコーン企業になると、お二人のキャリアにも変化が訪れます。宮田さんは、2022年1月にSmartHRの代表を退任し、Nstockを設立されました。そして内藤さんは2023年10月に取締役を退任しています。大きな決断だったと思うのですが、どのような心境だったのでしょうか?
内藤:それまでの大まかな経緯をお話しすると、僕はSmartHRを共同創業してから、エンジニアとしてプロダクトを開発していました。プロダクトの規模が大きくなり、組織の人数も増えてきたタイミングでカスタマーサポートの部署を担当。しばらくしてからSmartHRの導入企業にエンタープライズ企業が増えてきてセキュリティに力を入れていくことになり、セキュリティ周りを見ていました。その後、取締役会に監査等委員会をつくることになり、僕が監査等委員長に就任したのです。

ところが、けっこうしんどいなと思う時期が続いていたんですよね。仕事ではよく「できること・やりたいこと・求められることの3つが合わさったものが天職」と言われます。当時の僕は組織拡大に伴って、どんどん求められることが増えていったんですよね。
宮田:少し補足をすると、監査等委員会は社内外取締役がつくる委員会なので、その委員は取締役である必要があります。一般的には、監査役のほうが知られていると思います。守りを主とする監査役との違いは、事業成長の責任をもつ取締役が監査等委員を兼ねることで、攻めと守りの両方を見なければいけないところにあります。

内藤さんはSmartHRの大株主でもあるので、時価総額を伸ばすために攻めの意思決定もできるし、自分の資産を毀損する可能性があることから会社が悪い方向に進んでいる場合はちゃんと止めることができる。会社と利害が一致していて、もちろん事業や会社のカルチャーにも精通している。そのため、適任ではあるんですよね。
内藤:僕としても、取締役として求められることは頑張ろうと思っていました。そして、最初のころは自分が知らないことをインプットする面白さや解像度が上がっていく楽しさもありました。でも、やればやるほど自分には適性がないようにも思えてきて、しんどさも募っていくようになっていったのです。求められてはいるけれども、できることややりたいことが満たされていない状態でした。
宮田:内藤さんは取締役と監査等委員を退任後、いち正社員としてSmartHRで働き続けています。この判断には僕も驚きました(笑)。FIRE(経済的に自立し、かつ早期に退職すること)することもできたし、もう一度起業するなどの選択もあったと思うのですが?
内藤:よく言われますね(笑)。監査等委員を退任したあとのことを考えたとき、「エンジニアに戻りたい」という思いが強くありました。以前から、面接などで自己紹介をするときに「今は監査をやっていますが、もともとはエンジニアです」とずっと言い続けていたことに気づき、「自分はエンジニアにこだわりがあるんだな」と思っていたんです。

エンジニアとしてモノづくりをしたい気持ちはある。そして、もしモノづくりをするならSmartHRがいい。そういった理由から、SmartHRでエンジニアをすることにしました。ちなみに、現在は新規事業である「勤怠管理」サービスの開発に携わっています。
宮田:これから内藤さんがやってみたいと思うことはありますか?
内藤:いろんなことをやってみたいですよね。興味のあることはたくさんあります。僕、SmartHRの昔のミッションである「社会の非合理を、ハックする。」という姿勢がすごく好きなんです。自分にとっての正義に反している非合理を創意工夫しながらうまいこと正したい気持ちは強いですね。
「友人同士でSmartHRを創業してみてどうでしたか?」の答えは?
宮田:僕と内藤さんは、2019年と2024年の2回に分けて、SmartHR株を投資家にセカンダリーで売却し、現金化しています。そのとき、どういう気持ちだったか覚えていますか?
内藤:2回とも着金前はアドレナリンが出ていましたね。特に2019年はそこまでの大金を目にしたことがなかったので、「どうしよう」と不安になってしまい、資産運用についてすごく調べていた気がします(笑)。そのときの経験もあったので、先日のシリーズEの資金調達にあわせて実施したセカンダリーでの株式売却は2019年と比較するとそこまでドキドキしませんでした。しいて言うならば、細かい手続きがあり時間がかかりましたね。

宮田:株式を現金化したことで、何かいい変化はありましたか?
内藤:僕の妻はアスレチックトレーナーです。お客様にはプロレスラーの方が多い関係上、プロレスのリング付きジムが欲しいという話になりました。そこで、株式の売却によって得た資金をもとに、プロレスのリング付きジムをつくるプロジェクトを進めています。
宮田:めちゃくちゃいい話じゃないですか。夢がある(笑)。
内藤:しかし、希望するエリアで騒音対策と一定の広さを兼ね備えた場所を探すのがわりと大変で……。場所探しに苦戦しています(笑)。
あとは、僕の人生の重要なパートナーである妻と宮田さんの2人が、熊本県人吉市出身なので人吉市と、自分の故郷である広島県広島市、今住んでいる東京都世田谷区の3ヶ所に1,024万円ずつ、返礼品なしでふるさと納税をしました。

宮田:僕は人吉市から車で30分ほどさらに山奥の生まれですけどね(笑)。でも、かっこいいです。ところで、なんで1,024万円なんですか?
内藤:キリがいい数字だからですね!(※1024 = 2の10乗 = 10ビット )
宮田:エンジニアっぽい(笑)。
──あの、オチのあとに申しわけないのですが、最後に1つだけ質問してもいいでしょうか。お2人は共同創業してみてどうだったのでしょうか?最後にひと言ずついただきたく!
内藤:僕はよかったと思っています。
ジムづくりや、地元への寄付など、こうやって自分がやりたいことに取り組めているのも、宮田さんが「起業しよう」と声をかけてくれたからです。声がかかっていなければ、共同創業していなかったはずなので。
なにより、起業前の目標だった、自分たちの代表作となるプロダクト、会社をつくれました。
宮田:僕も、内藤さんと共同創業してよかったと思っていますね。
僕らの場合はSmartHR事業がスタートしてすぐに会社の価値基準となるバリューを設定したため、目線が大きくずれることはなく、大きな意思決定でも揉めることが少なかったと思っています。バリューの内容やワーディングも、バイブスがあっている内藤さんとつくったからこそ、自分たちが「これだね」と思えるものになった気がしています。
あと、生存者バイアスというか、代表作となるプロダクトをつくることができて、さらにユニコーンにまでなれたといういい結果が出たからよかった、というのは正直あると思います。これを読んでいる人のなかには、これから友人と起業予定の人もいるかもしれません。ぜひ、会社を成功させて、「友人と起業してよかった」と言えるよう頑張ってください!

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