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「株と引き換えに、時間を買った」カウシェがセカンダリーを経てDeNAとの資本業務提携に挑んだ理由

株式会社カウシェ 代表取締役CEO / 門奈剣平

株式会社カウシェ 取締役COO / 山田悠太郎

お買い物アプリ「カウシェ」を運営する株式会社カウシェ(以下、カウシェ)が、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)との資本業務提携を発表したのは、2026年3月3日のことでした。この提携における、Stock Journal目線での特徴はこちらです。

  • 資本業務提携はカウシェ側からの提案
  • カウシェの経営独立性は担保。意思決定におけるDeNAの立ち位置には変化なし
  • DeNAはカウシェの既存株主によるセカンダリー取引を通じて一部株式を取得
  • 提携後、DeNAから“プロフェッショナル人材”約10名がカウシェへ出向

カウシェの前回の資金調達は2025年6月。それから1年経たない間での大きな発表ですが、どのような意思決定があったのでしょうか?カウシェ代表取締役CEOである門奈剣平さんと取締役COOである山田悠太郎さんにインタビューしました。

門奈 剣平(もんな・けんぺい) カウシェ 代表取締役CEO
1991年生まれ。日中ハーフ。2007年まで上海で生まれ育つ。2015年慶應義塾大学環境情報学部卒。2012年より「Relux」を運営するLoco Partnersに、2人目のメンバーとして入社。シード前からM&A後のPMIまで経験。海外事業立ち上げから責任者を務め、年間取扱高50億円の大幅な事業グロースに貢献、海外担当執行役員&中国支社長兼任。2020年4月にカウシェを起業。強みはチームビルド、大型提携、アジア進出など。

山田 悠太郎(やまだ・ゆうたろう) カウシェ 取締役COO
東工大大学院MOT修了。2012年にドリームインキュベータに新卒で入社、戦略コンサル・買収企業のバリューアップに従事。その後スタートアップ業界へ転身。AnyPayにてブロックチェーン事業立ち上げ、ツクルバにて執行役員として事業開発、事業責任者を歴任しGMV100億円の事業成長を牽引。2023年8月より当社に参画、同年10月取締役兼執行役員に就任。2024年10月より取締役COOに就任。

事業の成長余地が高まる一方で、組織体制の課題が大きくなっていた

──改めて、今回の資本業務提携の経緯と目的を伺いたいです!

門奈 剣平(以下、門奈):実は、今回の提携は我々カウシェからDeNAさんへ提案したものでした。

前回の資金調達後、カウシェのDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)や滞在時間、売上総利益などの各数値は伸びていて、事業の成長余地は高まっていました。一方で、その成長ポテンシャルに組織が追いついていない感覚がありました。早急に組織体制を強化したいけれど、自分たちの力だけではある程度の時間がかかってしまうことは明白でした。そこで、DeNAさんに協力してもらうべく、提携を提案しました。

カウシェ 代表取締役CEOの門奈剣平さん

山田 悠太郎(以下、山田):少し補足すると、カウシェのアプリ内に新機能や買い物の選択肢を増やせばもっと事業を大きくできるはずだけれど、そのための人手や体制が手薄でした。大手サービスに比べて、カウシェは従業員数だけでなく経営層の厚みやプロフェッショナル人材の多様さにおいては遅れをとっている感覚もありました。

──カウシェさん側からの提案に、DeNAさんはどういう反応をしていたのでしょうか?

門奈:もともと、DeNAさんとはシリーズAのタイミングからデライト・ベンチャーズ(DeNA創業者の南場智子さんが設立したVC)を通じてお付き合いがありました。今回の提携を経てカウシェの社外取締役になる住吉さん(ディー・エヌ・エー AIイノベーション事業本部 本部長の住吉政一郎さん)ともそのころからやりとりがあり、カウシェのソーシャル機能について「面白いよね」と話したりしていました。お互いの業務における親和性があるとわかっていたこともあり、提携の提案もまっすぐ受け入れてもらえました。

今のカウシェが、DeNAレベルの人材や組織パワーを備えるには時間がかかります。ですが、DeNAさんに知見やリソースを提供してもらえるならば、このうえない話です。

よくM&Aを「時間をお金で買う」と表現することがありますが、僕らの場合は今回の提携で「成長に必要な時間を株式と交換した」と言えますね。

山田:ここで申し上げておきたいのは、この出資および業務提携は第三者割当増資ではなく、カウシェの既存株主の方々によるセカンダリー取引で一部株式をDeNAさんにお渡ししたということです。

カウシェ 取締役COOの山田 悠太郎さん

カウシェでは、事業を大きく伸ばしてくれる人に株を持ってもらうべきという考えがあります。DeNAさんには資金面ではなく、カウシェの事業を一気にパワーアップさせるための知見と人材を提供してもらう予定なので、このようなかたちにしました。

「これでカウシェが強くなる」と、約半数の既存株主がセカンダリー取引を決めるまで

──この提携を聞いて、既存株主の方々の反応はどうでしたか?また、今後さらなる事業成長を望めるならば「カウシェの株を手放したくない」と考える方も多い気がしました。

門奈:「DeNAと組むことでカウシェは伸びるよね」と、みなさん賛同してくれました。また、本来ならば時間を要する人材確保や組織強化を一気に進められることも、ポジティブに受け止めてくださっていましたね。

セカンダリー取引を相談したときは、既存株主それぞれの反応がありました。カウシェはセカンダリー取引の当事者ではありませんが、深く理解してもらうために既存株主一人ひとりと話し合いを重ねました。その結果、約半数の既存株主の方がセカンダリー取引に応じてくださいました。

──約半数!

門奈:そうです。ただ……既存株主の方々をとても悩ませてしまったと思っています。「セカンダリー取引をすることでカウシェが強くなる」「その分、持ち分が減る」が同時に起きているわけなので、シンプルに損得を計算できるわけじゃない。既存株主の方々との合意形成がかなり難しい部分でもありました。

それに加えて、カウシェの経営に関する意思決定の構造を歪ませないようにすることも大きなテーマでした。関連会社にはならない程度の株数をDeNAさんに渡すわけですが、種類株の組み合わせ次第では意図せず意思決定権が偏ってしまうケースも起こりうる。そうならないための比率の設計は慎重に行いました。

──結果的に、約半数の既存株主の方々がセカンダリー取引をしていますよね。「合意形成が難しかった」と話していましたが、どうやって理解してもらったのでしょうか?

門奈:「持ち分は減るかもしれないけれど、提携によって企業価値が上がるなら協力しよう」と、持ち分よりもカウシェの成長を応援するための判断をしていただいたように感じています。全株を手放された方のなかには、昨今のグロース市場の不透明感を踏まえ、IRR観点(投資期間と倍率を加味した収益率)で判断された方もいらっしゃったかもしれません。

山田:提携の話し合いは昨年秋ごろからスタートし、同時進行で既存株主のみなさんとセカンダリー取引の相談をしていました。不確定要素だらけだったので、既存株主のみなさんも判断しにくいところが多かったと思います。

ですが、カウシェにとってはこのセカンダリー取引が成立しないと提携できません。既存株主の方々は、それぞれの状況や条件のなかでセカンダリー取引の判断をしてくださっていました。みなさん、カウシェの成長を願ってくださっているのだと感じた瞬間でした。本当に感謝しています。

大手との提携は、経営の独立性を保ったまま知見を増やす選択肢にもなる

門奈:提携を発表した今、改めて感じているのは「大手企業との提携にはいろいろなかたちがある」ということでした。

──といいますと?

門奈:カウシェは、あくまでも“事業”を大きくするためにDeNAさんとの提携に踏み切りました。DeNAの住吉さんは社外取締役になりますが、以前から社外取締役をしてくださっていた元DeNA原田明典さんと交代する形となるので、経営における同社の意思決定権に変化はありません。

最近では「資本業務提携=大手企業にグループインまたはM&A一歩手前」の印象が強いように思いますが、いざ蓋を開けてみるとそれだけではないんですよね。そういった固定概念を外し、DeNAさんとカウシェのように、経営の独立性を保ったまま、知見や人材を増やす選択肢にもできることがもっと広まってほしいと思いました。

山田:提携後に約10名のプロフェッショナル人材にDeNAさんから出向いただくことになっていますが、マネジメント層として入ってくるわけではありません。

DeNAさん側では対象となるプロフェッショナル人材の方と話し、本人の希望に沿ったプロセスで進めてくださる予定です。我々としても、事業運営や開発部分に入っていただく予定なので、シンプルに実行力が増えると予想しています。なにより、大企業でしっかりキャリアを積んだ方が「スタートアップでいっちょやるか!」という気持ちで来てくださるわけなので心強いですよね。

門奈:大事なのは、出向社員とプロパー社員という分け方をしないこと。僕の感覚としては「カウシェに新しい社員が増えたぞ」くらいの気持ちで考えています。「DeNA出身の人が転職してきたらウェルカムランチしたりして、そのあと一緒に仕事をするよね?それと同じです!」「むしろ遠慮なくガンガンいきましょう」と社内にも伝えています。みんな、心強い仲間が増えることを楽しみにしています。

「カウシェは普通の会社にならないための勝負に出たほうがいい」

──カウシェさんの事業の伸びしろが大きいならば、自力で頑張る方向もあったのではないかと思います。それも、大手サービスに匹敵する数字を出せているのであればなおさら……と思ったのですが?

門奈:その考えもありました。山田と「このまま時間をかけつつも利益を出しながら、安定して頑張る手段もあるよね」と話していましたが、「でも、カウシェは普通の会社にならないための勝負に出たほうがいいよね」「ちょっと大変かもしれないけれど、あえてこちらの道を選ぼう」となりました。

山田:そうですね。カウシェには「変化を愛す」というバリューがあるせいか、だいたいそういう結論になりますね(笑)。

今回に関しては、やはり事業の成長余地があるからこそ判断できた提携でした。これだけユーザーが来てくれている状況下では、新しい打ち手を加えれば少なからず刺さるはずなのです。カウシェでは、そういった動きを速やかに行えるようにしたい。提携に関しては、簡単な道ではないけれども、カウシェを大きく成長させられる確率が高い方へピュアに賭けたいと思いました。

門奈:そして、この賭けで勝ちたいと思っています。DeNAさんという大企業のリソースを活用させてもらいながら、引き続き独立性のあるスタートアップの身軽さで立ち回る。このハイブリッドができあがったときの期待感はとても大きいです。既存株主のみなさんを含め、さまざまな方々の協力でその一歩を踏み出せました。あとは、僕らが進んでいくのみです。頑張りたいですね。

──以前のStock Journalで、カウシェさんには変化を愛する力がある人たちが集まっていると門奈さんは話していました。今回の提携で、そのパワーを感じた気がしました。引き続き応援しております!

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