株式報酬SaaS Nstock

チューリング初のストックオプション説明会レポート──CFOが強く主張した「従業員ファーストな設計」の全容

2026年3月、完全自動運転AIの開発を手掛けるチューリング株式会社(以下、チューリング)が、創業以来初めてとなるストックオプション(以下、SO)を発行し、全正社員に付与しました。

しかしSOは複雑で、付与されても「結局これ何なの?」と価値を実感できないまま時が過ぎてしまうケースは少なくありません。チューリングではこの課題に正面から向き合うため、株式報酬SaaS Nstockを導入。そして2026年3月6日、従業員向けSO説明会をNstockが同席するかたちで行いました。

月次のべスティング、退職時の持ち出し可能、M&A時の対応──。「かなりエンプロイフレンドリー(従業員ファースト)なSO」と同社CFOの盛島正人さんが胸を張る設計内容と、チューリング社員のみなさんのリアルな反応をレポートします。

チューリングのストックオプションは「企業の成功とみんなの利益を結びつけるもの」

「ついにこの日を迎えましたね。今日が何の日かわかりますか?」

そう切り出したのは、代表の山本さん(チューリング創業者 / 代表取締役CEOの山本一成さん)。このとき、すでにSOの契約締結の案内は送られていましたが、まだ中身をよく理解していない社員もいたようです。それは、かつて前職でSOを得た山本さんも同じでした。チューリング社員のみなさんの気持ちがわかるからこそ、従業員向けSO説明会を実施する理由を冒頭で明かしたのでした。

チューリング創業者 / 代表取締役CEOの山本一成さん

山本さんがSOにこだわる理由はシンプルです。

「みんなのインセンティブを揃えたいのです。チューリングの成功を、みなさんの利益に直結させたい。そのためにも、創業当初からちゃんとSOを付与したいと思っていました」(山本さん)

続いて、チューリングのSOで得られるざっくりとしたリターンの見立てを共有。2026年3月時点でのチューリングのバリュエーションは約600億円、SOプールが10%の場合、およそ60億円が配られることになると示しました。

この数字について山本さんは「チューリングが成功すれば、社歴の長い人は数億円くらいもらえるのではないか」と言い、会場をざわつかせました。

「ストックオプションの概要」「条件や税金」などの基本知識はNstockが説明

ここからはNstockのカスタマーサクセス担当である近藤純一がSOの基本的な仕組みを解説するパートがスタート。

近藤もまた、前職のタイミーでSOを付与された経験を持つ1人です。「私も、SOをもらったばかりのころは価値があまりわかっていませんでしたが、上場後、ようやくその価値がわかりました。ただ、価値がわからなかったがゆえに辞めてしまった仲間もたくさんいて……。だからこそ、SOの価値をもっと広めたいという思いでNstockに入りました」と、自らの原体験を語りました。

そしてこの従業員向けSO説明会のゴールを「会社の成長とご自身のリターンがリンクしていることを理解し、そのリターンがSOによって実現されていることを理解する。」とし、Nstockの説明スライドを用いながら近藤が次の内容をお伝えしました。

  • SOの概要
  • Nstockの操作方法

「SOの概要」パートでは、そもそもSOには一定の権利行使期間内に事前に定められた行使価格で株式を購入できる権利であることや、具体的にどのような流れで行使や権利確定をして利益を得るのかという流れを紹介しました。

では、なぜ会社は現金ではなくSOを付与するのか?近藤は「全員で頑張った結果を、会社と従業員が一緒に分かち合うことができる仕組みがSOです。会社が大きく成長したとき、SOの方が現金よりもはるかに大きなリターンを得られる可能性があります」と説明します。

Nstockカスタマーサクセス担当である近藤純一

チューリングのストックオプション設計から見えてきたこだわりとは?

SOの基本的な解説が終わると、チューリングCFOである盛島さんが登壇。チューリングのSO設計について一つひとつ解説しました。

チューリングのSO設計の主な内容はこちらです。

[チューリングのSO設計内容]

  • 税制適格SO
  • SOプールは15%(そのうち今回10%を全従業員を対象に付与)
  • 国税庁による算定方式(セーフハーバールール)に基づいた行使価格
  • 1年クリフ、5年ベスティング(べスティングは月次)
  • 退職時の持ち出しOK(ただし権利確定分のみ)
  • M&A時も行使可能(ただし確定分に限るが、特別に認めた場合は例外あり)
  • 初回付与分のみ入社日起算、その後は発行日起算

チューリングはシリーズAの資金調達時に投資家の方々と合意のもと、発行済株式総数の15%をSOプールとして確保しています。今回配布するSOは、そのうちの10%です。具体的には、配分はA項目とB項目の2段階になっており、A項目は2025年末までに入社した全社員に勤続月数に応じて配布。B項目は卓越した貢献をした社員への追加配布やCXO採用枠などに充てられます。残りの5%は将来のために残しています。

なお、今後のラウンドでも盛島さんは追加のSOプールを交渉していく考えがあり、「シリーズB時に『追加で15%ほしいです』と交渉し、うまくいけばさらに配れるようになります」と話しました。

今回のSO設計で最もインパクトがあるのが、行使価格が国税庁による算定方式(セーフハーバールール)に基づいた魅力的な行使価格であること。説明会に参加していた社員から「〇〇円の行使価格ってすごいんですか?」と率直な質問が飛ぶと、盛島さんは「とてもすごいです」と即答しました。

一般的にスタートアップが成長して企業価値が上がるにつれ、行使価格も上昇していきます。しかし、国税庁による算定方式(セーフハーバールール)を適用すると「株価のベースになる純資産から優先分配部分を除いた形で株価算定することができるため、権利行使価格を従前よりも低く設定することが可能になりました」と盛島さんは話しました。

※参照サイトはこちら

チューリングが「退職時持ち出しOK」「M&A時も行使可能」の条件を盛り込んだ経緯

具体的な条件の解説が続くなかで、盛島さんが特に力を込めて話したのが、SOの退職時・M&A時の取り扱いについてでした。

「企業の方針によっては『退職時のSO持ち出しNG』となっているところがあります。そうすると会社のフェーズに合っていないのに無理をしてしがみつかなければならない状況に陥る人も出てきます。それは、その人にとっても会社にとってもハッピーではありませんよね。なにより、退職によって過去の貢献をゼロにするのはおかしい。そのため、チューリングは退職時までに権利確定しているSOのみ持ち出せるようにしました」(盛島さん)

チューリングCFOの盛島正人さん

M&A時のSOの取り扱いにも、チューリングのこだわりが表れていました。権利確定済みのSOについては100%売却対象になるようSO設計に含めたのです。

一方で、社員からは「本当に100%売却対象になりますか?交渉によってパーセンテージが削られる可能性はありますか?」という質問が投げかけられました。これに対して盛島さんは「M&A時に議論となるのは未確定分」とし、次のように続けました。

「僕がCFOとしてM&A交渉を進めるなら、買い手企業に未確定分のSOも買い取ってほしいと交渉するつもりです。交渉がうまくいくかどうかはそのときの状況次第ではありますが、会社の判断によってみなさんのSOが消えることは避けたいと思っています」(盛島さん)

そして「交渉力を持てるかどうかは、やはり自動運転の完成によって大きく左右されます。自動運転が完成していてビジネスが上手くいっていれば、僕はいくらでも交渉します」と盛島さん。

権利行使の条件は原則として「上場していること」。それに加えて、非上場時にM&Aやセカンダリー(非上場株式の二次取引)の機会があった場合も行使が可能な設計になっています。「たとえば非上場のまま15年近く経って、自動運転もできてビジネスも回っていて上場しなくてもいいという状況になったら、セカンダリーでみなさんのSOを売却できるようにする」と盛島さんは説明しました。

さらに、付与されたSOは相続も1回までなら可能だと話します。これには社員の一部から安堵の声が漏れ聞こえてきました。

「創業初期メンバーをないがしろにしたくない」という思いから、初回に限り“入社日起算”

今回の初回付与で注目すべきは、ベスティングの起算日が「SOの発行日」ではなく「入社日」になっている点です。

チューリングは創業から約4年経っていて、その間、SOの仕組みはありませんでした。今回発行するSOを「発行日起算」にすると、創業初期からチューリングを支えてきた社員が「この4年間は何もナシか」となってしまいます。

「創業初期からいた社員の貢献をないがしろにしたくなかった」と盛島さん。この思いをかたちにし、初回発行に限り、入社日起算としたのでした。つまり創業期から4年以上在籍している社員は、付与された瞬間に80%以上が権利確定した状態です。なお、2回目以降の追加付与は発行日起算になります。

これに対して、ある社員が「私は2年半ぐらいいますが、10万株もらったとしたら5万株がベスト済みということですか?」と質問。盛島さんが「そうです。今日この瞬間にもらえています」と即答すると、ところどころから「おお」という声が上がりました。

Nstockでストックオプションの想定キャピタルゲインを初めて見たチューリング社員「こんなに!?」「やばい」

説明会の終盤、いよいよ実際にNstockを使うパートに入りました。チューリング社員のみなさんはそれぞれのスマホやPCでログインし、自分が保有するSOの株数、ベスティングの進捗、行使条件を確認し始めます。

そして、チューリングの事務局側が想定キャピタルゲインを更新。社員のみなさんがそれぞれNstockのマイページをリロードすると──会場の空気が大きくざわつきました。

なかには「やばい」「こんなに!?」と思わず声に出す人も。

Nstockのマイページで見られるシミュレーション画面※サンプルです
マイページで想定キャピタルゲインを確認するチューリング社員のみなさん

チューリングが事前に設定した複数の評価額パターンの1つには「1兆円」もあり、その金額を見た社員からさらに声が上がります。盛島さんがすかさず「みなさん、自分だけで見てください。他の人には見せないで!」と注意するほどの盛り上がりを見せました。

「チューリングは、自動運転さえ完成できれば時価総額1兆円はさすがにいくと思います。僕らの競合にあたるHorizon Roboticsは上場時に時価総額1兆円で、売上は250億円ぐらいだったのでいけると思いますよ!」(盛島さん)

「チューリング卒業生には、ストックオプションで得た利益を元手に次の挑戦をしてほしいから」

最後は「チューリングを卒業したみなさんが、SOで得た利益を元手にして第2、第3の挑戦をしてほしい」という盛島さんのメッセージで説明会を締めくくりました。

SOは単なる報酬制度ではなく、スタートアップのエコシステムを回す原動力でもある。その思想が、チューリングの制度設計には一貫して流れています。

チューリングの従業員向けSO説明会の冒頭で、山本さんはこのような言葉を残していました。

「この会社の難しさはいろいろあるけど、そのほとんどは自動運転を作れば解決します。冗談じゃなくて本当です。自動運転を作ることにフォーカスしてくれれば、みなさんはSOをもらえるし、この小さな会社が大きくなっていく過程も味わえます。これは代えがたい経験になります」(山本さん)

従業員向けSO説明会後に実施したアンケートではこのような声が寄せられました。

  • チューリングのSOは会社の成長と社員への還元が結びつく良い制度だと理解できた
  • チューリングのSOはかなり従業員優遇!
  • 1兆円でのシミュレーション額を見てニヤニヤしてしまいました!自動運転作って1兆円上場するぞ!
  • SOを見る時は評価額1兆円にして気合いを入れる

会社の成長と従業員のリターンが一直線につながるSO──。チューリング初の従業員向けSO説明会は、約90名の社員が自社の企業価値向上を"自分ごと"として理解した時間でもありました。

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