株式報酬SaaS Nstock

“上場後を見据えたストックオプション管理”で見てきた課題とは?クラシルがNstockとともに描いた運用体制

[課題]

  • ストックオプション管理が属人化しており、上場後のオペレーション負荷増大に懸念を募らせていた
  • 株式の流動性を高めるため、ストックオプションを持つ従業員の行使から売却までを正確に進める必要があった

[会社データ]

社名

クラシル株式会社
(旧商号:dely株式会社)

設立

2014年4月

従業員数

204名(2025年3月時点)

SO付与回数

15回(2025年6月現在)

レシピ動画プラットフォーム「クラシル」などのサービスを運営するクラシル株式会社(旧商号:dely)が初めてストックオプション(以下、SO)を発行したのは創業2年後である2016年でした。そんな同社は2024年12月にグロース市場へ上場。これからさらに企業価値を上げようとするなか、上場直前にぶつかったのが「株式の流動性向上」という課題でした。

「上場後、機関投資家の方々に参入していただくためにも、SOを積極的に権利行使し、株式に変えて売却してもらう必要がありました」(クラシル取締役 CFO、戸田翔太さん)

上場企業として新たなステージへ進んだクラシルは、株式報酬管理SaaS Nstock(以下、Nstock)でこの課題をどう乗り切ったのか? クラシル取締役 CFOの戸田翔太さんと執行役員  経営管理本部GMの石原遥平さんにお話を伺いました。

クラシルにとってストックオプションは「一蓮托生になって頑張るためのツール」

──クラシルさんは創業2年後(2016年)にSOを導入されています。どのような経緯があったのでしょうか?

石原:クラシルは、代表である堀江(クラシル代表取締役の堀江裕介さん)が共同創業者の大竹(クラシルCTO兼Reward Marketing BU長の大竹雅登さん)と一緒に学生時代に起業したスタートアップということもあり、どちらかと言いますと「高い給与を支払えない代わり」として出していた意味合いが強かったと思います。初めての付与は2016年でしたが、当時のメンバーの多くが引き続き頑張ってくれているので、リテンション効果はあったのではないかと感じています。

クラシル執行役員  経営管理本部GMの石原遥平さん

戸田:当時からさまざまな変遷を経て、現在では、クラシルにとってSOは「一蓮托生になって企業価値を上げるためのツール」という立ち位置になっています。

しかし、堀江には自社のSOを必要以上に強調して伝えたくないという考えがありました。そのため、経営陣や事業に貢献した従業員に限って付与していたのです。「全従業員に付与」というわけではありませんでしたが、堀江自身が「一緒にサービスをしっかり伸ばしていこう」「みんなで会社のビジョン達成に邁進していこう」と社内で何度も語ってきたおかげで、従業員の多くが共感し、事業に集中できる環境を築くことができました。

クラシル取締役 CFOの戸田翔太さん

一方で、当然ながらスタートアップは綺麗事だけでは通用しない場面に何度も遭遇します。そんなときに踏ん張るための効果的な手段の1つがSOだと考えています。ちなみに、上場申請する直前まではSOを発行できたため、上場5ヶ月前まで出していました。当時の価格は、上場時の公開価格の1/3くらいでした。

上場直前に見えてきた「株式の流動性向上」という課題

戸田:ただ、上場直前に新たな課題が見えてきまして……。

──新たな課題ですか?

戸田:クラシルは時価総額に対して、実際に取引できる株式数が少ない状態でした。つまり、ちょっとした売買でも株価が大きく変動してしまうリスクがあったのです。そのため、上場後にSOを権利行使して株式に変え、売却し、市場に流通するクラシルの株式を増やす必要がありました。

そもそも、SOはあくまでも“権利”です。権利行使して株式に変えるまでは、その価値が会社都合でなくなってしまう可能性をはらんでいます。我々としては、クラシルが上場するまで頑張ってくれた成果として、早めに財産に変えてほしいという気持ちもありました。SOを持つ従業員にこの気持ちと会社の状況をストレートに伝えたところ、前向きに受け取ってくれる人が多かったです。

──通常のSO実務に加えて権利確定〜売却まで推奨となると、もう想像がつかないレベルの大変さになりそうです。

戸田:SO実務は法的手続きや数値管理、個人情報を扱う関係上、限られた人しか実務を行えません。クラシルの場合、私と石原、堀江、そしてもう一人の合計4名で管理していました。この体制で、上場後の流動性向上のために権利行使〜売却のオペレーションを整えようとしましたが……無理があることは明らかでした。

石原:そうですね。実際にやろうとしてみましたが、想像の100倍以上大変でした。SOを権利行使するタイミングは我々でコントロールできるものではないですし、もし権利行使されたらそのたびに毎月証券会社とのやりとりが発生します。

また、ミスは決して許されない。例えば、税制適格SOの要件が外れるようなミスで「非適格」にしてしまうなどですね。税制非適格になると先に税金を収めなければならないのですが、その金額は相当なものです。そのほか、付与数を間違えたり権利行使がスムーズにいかなかったりなど、SOを持つ従業員が不利益になるようなミスは多数潜んでいます。

このような業務を上場準備と並行するならまだしも、上場後も続けるのはさすがに無理があります。どうしたものかと考えていたところ、出会えたのがNstockでした。

事例が少ないなか、Nstockは「相談相手」として助けてくれた

──Nstockを利用してみて、いかがでしたか?

石原:UI/UIXがとてもいいですね!実務を担う我々だけでなく、権利者である従業員も自分のSOについて理解しやすいものになっています。

最も助かったのはオペレーション設計についてアドバイスをしてもらえたことでした。上場後にSOを権利行使し、株式に変えて売却という事例があまりないなかでは、クラシルでやろうとしていることはまさに手探り状態でした。創業当初にSO設計をした担当者がいないなかでは苦しいところもあったのですが、Nstockのドメインエキスパートの方々の豊富な経験によって乗り越えることができました。

戸田:我々はSOに対するリテラシーが低いわけではありませんが、それでも今回のようなケースについてはわからないことが多かったのです。Nstockを導入してSO実務を脱属人化できたことに加えて、「相談相手ができたこと」は大きなメリットでした。

また、上場企業は1事業に対する評価だけでなく、株式市場での評価にも意識を向けなければなりません。本来ならば上場後は従業員を交えて「株価を上げるためにはどうすればよいのか」を話し合っていくべきなのですが、なかなか認識が一致しないところがありました。NstockによってSOが可視化され、従業員それぞれが「株式市場で評価されたかどうか」を意識しやすい環境を整えられたこともよかったですね。

──クラシルさんでは、Nstockが“同席”というかたちで、SOを持つ従業員のみなさまを対象とした説明会も実施しましたよね?

石原:そうです。SOに関する情報は資料に詰め込むほど難しくなるのですが、Nstockに間に入ってもらったことで、要点を絞って説明できました。税務面についても、Nstockのドメインエキスパートの方に主導していただいたおかげで、しっかり伝えられたと感じています。

「特にレイターステージのスタートアップは権利行使・売却までの詳細設計を事前に検討した方がいい」

──上場を目指すスタートアップへ、SOに関するアドバイスはありますか?

戸田SOは、付与して終わりではありません。権利行使と売却を含めて詳細に設計することが重要です。

実際に、投資家目線では企業価値よりも「流動性がある・なし」で投資対象に入るかどうかが決まります。我々も流動性確保を想定していましたが、いざ蓋を開けてみると想定外のことも多かったんですよね。

石原:上場企業にとって株式の流動性は、その後の企業価値を継続して向上させていくための「生死を分ける問題」です。企業価値を継続的に向上させ、かつ従業員による株式の売却が市場にネガティブな印象を与えないようにするためにも、株式の流動性は一定程度必要です。流動性がないと、市場が従業員の株式を十分に吸収できず、リターンを損ねてしまうリスクがあります。特にレイターステージのスタートアップは権利行使・売却までの詳細設計を事前に検討した方がいいですね。まだ広く知られておらず、成功事例が少ないからこそ、Nstockのドメインエキスパートのような方々と一緒に、企業価値と従業員への還元を両立させるSO設計を考えていくことをおすすめします。

──本日はありがとうございました!我々も、クラシルさんと伴走できるように頑張っていきたいと思います。

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本記事に登場されたクラシル戸田さんの登壇イベントを開催予定です。詳細はこちらをご確認ください。

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