ストックオプションは、もっと活きる──Nstock株式報酬の専門家とCSが一歩踏み込む人的支援と“その先”

「Nstock株式報酬」は、ストックオプション(以下、SO)を管理するソフトウェアとしてスタートしました。しかし、SO実務は必要な業務が多岐にわたり、深い専門知識も求められます。「ソフトウェアだけではお客さまを支えきれない」。そう判断して、Nstockはドメインエキスパートやカスタマーサクセスによる人的支援へと領域を広げてきました。
今回のインタビューでは、Nstockで人的支援を担ってきたドメインエキスパートの興梠有美(以下、yumi)とCSの近藤純一(以下、koudon)、庭野真衣(以下、maimai)が登場。どこまで踏み込んだ支援を行っているのか?そのなかでどんな変化を感じているのか?さらに、人的支援をサービスの一部として正式に位置づけた今、何を目指したいと思っているのかを聞きました。
NstockのドメインエキスパートとCSの役割は「変換」と「伴走」
──まず、ドメインエキスパートとCSそれぞれの役割から伺いたいです。yumiさんはドメインエキスパートですが、Nstockではどんなことをしているのでしょうか?
yumi:私はNstockに入る前、事業会社で4年間、SOの実務を担当していました。上場前後の実務を担当していたので、発行や行使なども経験しています。この経験を活かし、NstockのドメインエキスパートとしてSOに関する専門知識と実務経験を、お客さまにスムーズに使っていただけるプロダクトとサービスに「変換」していく役割を担っています。
そのうえで、今担っていることは大きく3つあります。それが「SO領域に関する社内の疑問や相談に応えること」「お客さまの疑問を解消し、意思決定に必要な情報や論点を整理すること」「サービスをドメイン観点でレビューすること」です。
お客さまだけではなく、社内のメンバーも「この設計にすると、実務上どんな影響がありますか?」「実際の運用で気をつけたほうがいいことはありますか?」と悩むシーンが多々あります。そんなときの相談相手になることも、私の大事な役割です。また、SO設計に悩むお客さまに「こういう税制改正が行われているからこんな設計ができますよ」「御社にこういう思想があるならば、こんな設計がいいと思いますよ」とアドバイスすることもあります。
「サービスをドメイン観点でレビューすること」では、私自身が開発チームに入り込み、法的・実務的な観点からレビューしています。開発を進めるなかで出てくる細かな論点についても一緒に検討するため、開発チームのミーティングには毎日参加していますね。

──koudonさんとmaimaiさんは、CSとしてどんなことをしているのでしょうか?
koudon:お客さまがSOを導入したら、それで終わるわけではありません。権利者への説明や付与、行使など、大掛かりなイベントが残っています。そこを、我々CSが伴走しています。
具体的には、SOを自社でうまく活用できるように、権利者向けのSO説明会の企画・実施を一緒に行います。そのほか、SOの発行登記や税制適格SOを付与した場合の税務署への付与調書の提出など、年間を通じて発生するであろうイベントをサポートしています。サービス導入後はお客さまの上場を含めたEXIT後まで伴走するため、長いお付き合いをさせていただくことになります。そういう意味でも、NstockのCSは、何かあったときにすぐに声を掛けていただける関係になれているかどうかがとても大事だと思っています。
──SOに関しては失敗できないところも多いので、お客さまからの相談は多そうですし、一つひとつが深そうだと感じました。
maimai:そもそも、SOは管理・運用するうえで必要な知識が幅広いんです。ある程度の知識を持っている方でも、いざ行使の段階になると、その都度の判断が難しくなってしまいます。場合によっては「それはやらないほうがいいかもしれません」と、CSがブレーキ的な役割を果たすこともあります。
そのため、Nstockにおいては相談先がわかりやすいことも大事だと思っているんです。専門性を高めるために機能ごとにサポート体制を組む良さもありますが、今のNstockでは1社に1人のCS担当が伴走するようにしています。
「権利者向けSO説明会」誕生秘話と意義
──お客さまのSO実務に伴走し続けてきたなかで、大きな変化だったと思うものはありましたか?
maimai:権利者向けSO説明会ですね。当初、CSチーム内では「それはお客さまが話す内容だから、Nstockの人間が前に出ないほうがいいのではないか」といった意見もありました。ところが、koudonさんがお客さまにニーズをヒアリングし、「実施してほしいというお客さまがいるのでやります」と進めてくれて。koudonさんが突き進んでくれなかったら、実現しなかったと思います。
私もkoudonさんも、あまりSOを理解できないまま行使や売却のタイミングを迎えてしまった経験があったので、「ちゃんと知っておきたかった」という気持ちが強いんですよね。Nstockに入社してみて、いざ事務局の視点に立ったとき、SOは制度が複雑な上に確約できる報酬ではないことから、伝え方が非常に難しいと実感しました。そういった経験や気持ちから、「Nstockがお手伝いできたら良いのでは」と権利者向けSO説明会のアイデアが生まれたんです。

──実際にやってみての反響はいかがでしたか?
maimai:お客さまからも権利者の方からもとても好評でした!特に権利者の方からは、「SOを理解できたことでモチベーションが湧くようになりました」「説明をしてもらえることで、良い会社だと改めて思えた」という声も多くいただきました。今はとても評判の良いサービスの1つになっていて、多くのお客さまとともにSO説明会をやらせてもらっています。
koudon:始めたばかりのころは、説明会当日の進行などをすべてNstockが担当していました。ただ、その背景や代表を含めた経営陣の思いはお客さまご自身に話してもらったほうがいいと考え、今ではそのパートに関してはお任せしています。Nstockはあくまでも「SOとはどういう制度なのか」という一般的な話をする立場からお話しさせていただいています。
内容も、少しずつアップデートしています。最近ではSOの管理・運用を担う事務局の方々の大変さもしっかりとお伝えしたいと思い、新たに内容を加えられないかと考えているところです。

maimai:ちなみに、koudonさんは実施後の満足度アンケートで圧倒的に点数が高いんです。何か意識していることはあるんですか?
koudon:私の周りにはあまり理解しないまま、大金になったはずのSOを手放してしまった人も少なくありませんでした。彼らが初期から会社を支えてきたことを知っていただけに、「SOの価値を正しく理解してほしい」と思いながらお話ししているところもあるので、自然と熱がこもっているのかもしれません。
法律を解釈して現場に落とし込むのは“人”の役割
──Nstock株式報酬ではAIと人の両輪でお客さまをサポートしていく体制を整えようとしています。それぞれどんな役割分担になると思いますか?
maimai:契約書を読み取り、その内容をNstockに登録していくなど「すでにデータやルールがあり、細かい作業を正確に行うことを求められる部分」は、AIの力を使って今後より強化していくことになると思っています。そして、SO設計の相談や価値を正しく伝えるための活動は、やっぱり人が支援していくことになりますね。
yumi:私も、設計の相談などは引き続き人が担うことになると考えています。AIに相談すればそれなりにいい設計は作れるかもしれませんが、お客さまの意向や昨今のトレンド、他社事例をあわせてご提案するのはドメインエキスパートやCSだからこそできるんです。

また、SO設計には「だいたいこうするもの」という慣習があります。たとえば「行使できるタイミングを上場時だけに限定する」「上場した後もベスティングを続ける」といったものです。もちろん、意図があって選択しているのであればよいですが、「前例がそうなっているから」という理由だけでそのまま採用されているケースもあります。SOは一度設計すると後戻りが難しいものです。時には私たちが「従来はそうかもしれませんが、本当にそれでよいでしょうか?」と問いかけ、前提から一緒に考える姿勢も必要だと思っています。そこは、人が担い続ける部分ですね。
maimai:AIは優秀ですが、まだ世の中に出ていない一次情報を掴む力は弱いと思っています。SOの実務は、担当者の経験としては積み上がっていても、外に出ている情報が本当に少ない。ドメインエキスパートであるyumiさんや野瀬さん(野瀬梓紗)のように、いろいろな経験を持っているからこそ伝えられることは多いです。ドメインエキスパートたちの経験に裏打ちされた知識から、お客さまがご自身にあった選択ができるというのはNstockならではだと思っています。
──「まだ世の中に出ていない一次情報」とは、具体的にどんなものでしょうか?
yumi:法律では「こうしなければならない」と決まっていても、「実際にどう進めればいいか」まで書かれていません。そのため、実務担当者は、法的に必要な要件を押さえながら、自社の体制や状況に合わせて実務や運用を組み立てていくことになります。ただ、そうした実務上の工夫や選択肢は、まとまった形で世の中に出ているとは限りません。
たとえば、SOを発行するときの手続きです。同じ申込割当方式でも、申込書と契約書をそれぞれ用意して進める方法もあれば、必要な事項を契約書に盛り込み、申込書を兼ねるかたちで手続きを簡易にする方法もあります。大切なのは、一般的な型をそのまま当てはめることではなく、法的に必要なことを押さえたうえで、その会社の体制やスケジュールにあった運用を考えることです。こうした実務上の選択肢を知っているかどうかで、取れる対応も変わってきます。
ところが、このような実務上の背景や、その会社ならではの事情までは、AIだけでは捉えきれません。法的な要件を押さえたうえで実務ではどう運用するかは、経験や知見が必要だと思っています。
koudon:お客さまのなかには「株主総会で決議したその日に契約書を送り、締結まで進めたい」というケースがあります。手続き上は可能でも、権利者側の対応期間まで考えると本当にそのスケジュールで良いのかは別の話です。そういうときは「これは説明の期間をどれくらい取る予定でしょうか?」とお聞きしながら、経緯や背景も含めてお話しするようにしています。

Nstockが持つ“専門性”で、ストックオプションを取り巻く環境も変えていく!
──これまで積み上げてきた人的支援を正式にサービスの一部として位置づけました。今後、どういったことをやりたいと考えていますか?
maimai:権利者の方々に「SOを渡す側の思い」を届けたいです。
今は想定キャピタルゲインをお見せする会社も増えてきて、「一緒に頑張ったら、このくらいになるかもしれない」とわかるようにしています。この方法でも伝えられているところはあります。ですが、前提として会社が従業員にSOを渡すのはお金を配りたいだけではなく「これからも一緒に頑張っていきたい」という期待が込められています。権利者の方々にはSOのキャピタルゲインは見えても、その思いはまだ見えづらいところがあります。
Nstockでは契約書のなかで特に重要な部分を抜き出し、それがどういった条件なのかを権利者マイページで見られるようになっています。それができるならば「なぜこの条件にしたのか」もセットで伝えられるはず。お客さまがSOに込めた思いをしっかり届けるお手伝いを、もっとやりたいですね。

koudon:私は、支援する領域そのものを広げていきたいと思っています。これは私が言い出したというより社内でよく話していることでもありますが、SOの管理・運用に閉じず、他領域でもサポートするなど、総合支援的にできないかと考えているんです。
具体的には、SO×HR領域です。SOの価値が多くの人に浸透すれば、自社で働くモチベーション向上になるだけでなく、転職時の判断軸の1つにもなります。EXITを見据えて採用戦略としてSOをどう活用していくべきなのかという部分でもサポートの領域を広げられたらと思っていますね。
maimai:あと、ちょっと思い出したことなのですが、少し前に宮田さん(Nstockホールディングス代表取締役社長の宮田昇始)が「SOをやってきたことって、キャリアに活かせる気がする」と話していたんです。それ、まさにNstockができることの1つなんじゃないかと思っています。
SOの担当は職種として確立していないので、法務や労務の方が本業務の合間に進めていることがほとんどです。なのに、社内では「やってもらって当たり前」「間違わずに案内できて当たり前」で、逆に事務局の方々は「大変なことばっかり……」となりがちです。「あなたが担当者でよかった」と、事務局の方々が報われるようにしたいですね。
yumi:そうですよね。担当者の方の負荷は、本当に大きいと思います。
SO実務は経験者が少ないこともあり、多くの事務局の方にとって「初めての業務」です。業務量も多く、たとえば契約書ひとつとっても、紙で締結する場合は人数分の契約書を2部ずつ用意したり、発行方式によっては登記のときに契約書の原本が必要になったり。一つひとつの工程に気をつけないとならないポイントが、いくつもあるんです。「この実務をやるのは初めてなのに……」という不安を抱えながら、膨大な業務と向き合っている。その大変さは、私自身も実務を経験してきたからこそ、よくわかります。
だからこそ、システムやソフトウェアの提供という観点だけではなく、NstockのドメインエキスパートやCSの知見も一緒に届けられれば、お客さま側のSOへの理解も深まり、より価値を高められるんじゃないかと思います。
──確かに、NstockでSOをはじめとした株式報酬を安全に運用できるだけでなく、そこに込められた思いも届けられるようになれば、権利者にとってSOは「次にどの会社で働くか」を考えるときの材料になりますし、会社にとっては採用の武器としてより強力になります。そのうえ、株式報酬という業務自体がキャリアに活かせるようになればと思うと……みなさんが持つ専門性でできることはまだまだたくさんありますね!
koudon:Nstockならできそうですよね。やっていきましょう!

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