「相談される存在」から「意思決定を支える存在」へ。プロダクト×AI×専門家でつくりきる株式報酬に不可欠なインフラ

「Nstockの強みは“サービスを活用する=株式報酬を正しく運用する状態”を担保できること」
2026年7月、「株式報酬SaaS Nstock」は、これまでのプロダクト提供に加えてAIと専門家が伴走してストックオプション(以下、SO)の導入や運用を支援する「Nstock株式報酬」へのリブランディングを発表しました。
ただ、これは急な方向転換ではありません。立ち上げ期からサービスを支えてきたソフトウェアエンジニアの島 裕生(以下、shima)とプロダクトオーナーでカスタマーサクセスの杉浦俊貴(以下、sugiura)に聞くと、この流れはむしろ必然でした。彼らから見たNstockの「これまでとこれから」、そして「他のサービスにはない強み」を聞きました。
ストックオプション実務で求められているのは「効率化」だけじゃない
──お2人は立ち上げ期からNstockに関わってきましたが、これまでを振り返ってみてどんな手応えを感じていますか?
sugiura:特に手応えを感じているのは、これまで事務局の方々がほぼ手作業で行っていたSO行使時のオペレーションの負担を確実に軽くできたことです。Nstockがなかったころは、権利者である従業員の方々がそれぞれ紙の申請書類に必要事項を記入して事務局がとりまとめる、あるいは事務局がエクセルにまとめた申請内容を書類に書き写して提出するといった進め方でした。それが今、Nstockでひと通りできるようになっています。

また、SOは専門知識が必要な場面も多く、なおかつ事務局担当者のなかには「初めてSO実務を担当します」という方も少なくありません。さらに、SOは上場前などの大きなイベントにあわせて行使の準備、権利者の口座開設、社内の承認フロー、税務対応……といろいろな作業に追われることになります。Nstockを導入していない企業の方からも「こんなとき、どう進めるといいのでしょうか?」と相談されることも多いんですよね。そういう意味では、SOで困ったときに「そうだ、Nstockに相談しよう」と純粋想起していただけるようになったことも、大きな手応えの1つですね。
shima:「そうだ、Nstockに相談しよう」とすぐに思いついてもらうようになったのは、SOのディテールや運用に関する知識、経験を多く持つカスタマーサクセス(以下、CS)やドメインエキスパートが築き上げてきた信頼の証なのだと勝手ながら思っています。Nstockが「単なるSaaS」に留まらなかったのは、彼らの存在が大きいです。

──SO実務に関しては、作業の効率化だけが求められているわけではないとわかる事象でもありますね。
shima:SOをはじめとした株式報酬は、お客さまにとって大事な資本の一部でもあるため失敗できないし後戻りが難しいものです。だからこそ、実務の効率化だけでなく「正しく運用できているかどうか」を見極めなければならない。「効率化だけでは解決できない」という点では、向き合いがいのある事業領域ですよね。
株式報酬を正しく運用する「ガードレール的役割」はNstockにしかできない
──sugiuraさんとshimaさんは、「Nstockの強み」をどう捉えていますか?
sugiura:「Nstockを活用する=株式報酬を正しく運用できている状態」を担保できることです。
SOに限らず、株式報酬にはさまざまなルールがあります。たとえば、税制適格SOの要件を満たしていないと権利者である従業員の方々が税金を多く支払わなければならないなど、あらゆるところにリスクが潜んでいます。そして、そういった落とし穴は専門知識がないとなかなか気付けない。
でも、Nstockを活用していることで安全に管理・運用ができるほか、「このタスクを完了できていない」「税制適格要件から外れる可能性がある」などのリスクヘッジもできる。そういったガードレールのような役割は、Nstockにしかできないと思っています。

shima:同感です。SOは「制度を守らないと問題が発生するもの」であり、なおかつ法律も税務もルールが変わったりします。SOに知見がある事務局だったとしても、それらの情報を日々キャッチアップすることはとても大変です。そのあたりの負担を少しでも軽くできるように、サービス全体で引き続き向き合っていきたいですね。
──ガードレールの役割をやりすぎると逆にお客さまが使いづらくなったりするんじゃないかと思ったのですがどうでしょうか?
sugiura:そこがめちゃくちゃ難しいところなんですよね!ガードレールとは、本来は法律や制度に合わせて「こうなっているべきだよね」と提案する立場ですが、ガチガチにしすぎると実際の運用を吸収しきれない課題もあります。逆に「何でもできる」ようにすると、今度は「これって大丈夫なんだっけ」という迷いを生んでしまう。バランスを考えなければならないと思っています。
Nstockのサービスを広げながら見えてきたこと
──サービスを拡大していくなかで「想定外だった」と感じたことはありましたか?
sugiura:ありました。当初は「この事象は9割方発生しない」と判断して、あえて仕様に含めなかったものがいくつかあったんです。ところがリリース後、お客さまが増えていくにつれて「9割方発生しない」と考えていたはずの事象がけっこうあることがわかりました。たとえば、小数点です。「小数点が入るケースはほとんどないから、仕様に含めないでおこう」としていたのですが、実際にはけっこうあったんですよね。
※SOの数量や行使価額に小数点が生じるケースがあります。たとえば株式分割をすると行使価額が分割比率に応じて調整されるため、割り切れない場合は端数が出ます。その端数を切り上げるか切り捨てるかは、新株予約権の要項によって会社ごとに異なります。
shima:契約書の書き方は会社ごとに違うので、お客さまの契約書を読み込んだり入力してもらったりしたときに初めて顕在化するものが往々にしてあるんです。小数点はほんの一例ですが、「僕らが想定していないバリエーションもあるんやな」と日々痛感しています。
──そう考えると、多くの方々がイメージする「SaaS」とは作り方が異なっている気もしますね。
shima:そうですね。多くのSaaSが「新機能をリリースしました」と発表すると、それを待ち望んでいたお客さまがすぐに使ってくれて、効果や反応を確かめられます。でも、Nstockはそうではない。SOは頻繁に発行・付与されるものではないため、新機能をリリースしてもすぐに活用いただけるわけではないんです。そのあたりは、ほかのSaaSとは少し感覚が違うかもしれませんね。
また、Nstockのリリース直後はSOのライフサイクルのうち「設計」と「発行」のみ取り扱っていました。その後、「行使」の機能をリリースしたのですが、実際にお金が動く工程のなかで判断しないといけないことが一気に増えました。SOの設計と発行のみのプロダクトのままでは出会わなかった課題でしたね。

──従業員向けSO説明会もサービスを広げるなかで生まれたものだったんですよね?
sugiura:そうですね。とはいえ、僕は当初「どうやってやるつもりなの?」とぜんぜん乗り気ではなかったのですが(苦笑)。でも、ちょうどCSメンバーが増えたこともあり実施してみたところ、とても好評で!
shima:いやぁ、従業員向けSO説明会はほんまにいい企画だと思いますよ!SOを説明する際、自社の人たちだけで説明しようとすると、SOは報酬内容に加えて税金の話も入ってくるので、丁寧な説明が欠かせません。ただ、自社の人たちだけで説明しようとすると、どうしても会社側の言葉として受け取られてしまう場面もあるんですよね。そこにNstockが“第三者”として入ることで、事務局の説明コストを減らしながら、権利者となった従業員のみなさんにSOの価値をフラットに伝えられます。これは、Nstockにとって意義深いものなんじゃないかと感じています。
大きな意思決定をするお客さまの背中は、人間じゃないと支えられない
──リブランディングでは「AIと専門家によるサポート」という打ち出しをしています。AIと人それぞれの役割における住み分けは、どう考えていますか?
sugiura:前提として、「Nstockが提供すべき価値においてAIを活用するのが最も適切なら導入する」という判断軸があります。そのうえで、住み分けはこんな感じで考えています。
・人によるサポート:SO設計や実務に関する相談など、SOに関する意思決定のサポート
・AIによるサポート:機能の使い方、アップロードの仕方などシンプルな疑問へのサポート
「人によるサポート」では、SO設計を決めるなど大きな意思決定に伴走する役割を果たしたいと思っています。もちろん、AIによる回答で解決できるところもあると思いますが、それだけで資本政策にも関わる大事な決断ができるかというと難しい気がしているんですよね。一方で「この承認ボタンを押せばいいんだろうか?」「アップロードはこのやり方で合っているだろうか?」というシンプルな疑問には、AIのほうが向いています。
shima:sugiuraさんの住み分けの考え方に同意です。そのうえで僕は、3つの役割を分担させすぎないようにしながら「プロダクトとAIが人を押し上げていく関係」にしたいと思っています。
今「人じゃないと支えられない」とされている意思決定も、よく見ると「情報が散らばっていて、専門家の頭の中にしか判断基準がない」から人が必要なケースがけっこうあるんですよね。契約書の要項、税制適格の要件、過去の類似事例など、こういったドメイン知識をプロダクトが構造化されたデータとして持てば持つほど、AIが安全に答えられる範囲は広がっていきます。
開発側としてのチャレンジは、この境界線を引き直し続けることだと思っています。専門家の「これは要注意」をコードに落とし、CSの相談で見えてきた判断基準をデータモデルに取り込む。そうやってプロダクトがかしこくなるほど、人は「この会社にとってどんなSOが効果的なのか」の伴走に集中できる。そんな関係性にしていきたいです。
「プロダクト×AI×専門家」にできることは、まだまだある
──最後に、Nstock株式報酬としてどう進化させていきたいのかを聞きたいです!
sugiura:やはり、企業と従業員の方々が株式報酬をうまく活用できる状態を作り、ゆくゆくは企業価値を高められるものにしていきたいですね。そのためにも、まずはプロダクトを使ってもらえるタイミングを増やしたいです。具体的には、Slackで次のタスクが通知されたり、SmartHRと連携して退職時に自動で必要書類が作成されたり。そうやって、NstockのなかでSOに関する業務がタスクとして処理されていく状態を作りたいですね。

shima:僕は、お客さまがSO設計に込めた思いを、権利者の方々に届けられるようにしたいです。
以前に比べて日本でもSOの認知は高まっていますが、米国などと比べると、SOをもらった従業員の多くが、自分の持ち分の価値も、行使のタイミングも、税金がどうかかるかもわからないまま働いていたりします。これは情報インフラが足りていない状態と言えるので、ソフトウェアが解くべき課題なんだろうなと思っています。
サービス面でも人的支援面でも、まだまだやれることはたくさんあります。ガードレールの役割を果たしつつ、お客さまそれぞれが望むSO設計をうまく運用できる状態をシームレスに実現できるよう、真摯にやっていきたいですね。
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