研究開発に資金を投じ続けるディープテック企業だからこそ──リージョナルフィッシュがNstockで築く“従業員に報いる”ストックオプション

[課題]
- ストックオプションやファイナンスに馴染みが少ない従業員に、価値や意義を伝える手段がなかった
[会社データ]
社名 | リージョナルフィッシュ株式会社 |
---|---|
設立 | 2019年4月 |
従業員数 | 70名 |
SO付与回数 | 2回 |
最先端のゲノム編集技術をはじめとする品種改良技術を活用し、2021年には世界初のゲノム編集動物食品である可食部増量マダイ「22世紀鯛」、それ以降では高成長トラフグ「22世紀ふぐ」、高成長ヒラメ「22世紀ひらめ」といった品種を開発・販売しているリージョナルフィッシュ株式会社(以下、リージョナルフィッシュ)。同社では創業2年後から、発行時に所属していた全従業員を対象にストックオプション(以下、SO)を付与しています。
「リージョナルフィッシュ代表である梅川(梅川忠典さん)は、従業員一人ひとりとのつながりを大事にしています。みんなで一丸となって事業に向き合うためのツールとして、創業2年後からSOを導入しました」(社長室マネジャーの津田政周さん)。
さっそく、SO設計のこだわりや株式報酬管理SaaS Nstock(以下、Nstock)導入のきっかけについて、社長室の津田政周さんと宮島皐さんにお話を伺いました。
初めてストックオプションを付与したときの従業員の反応は…?
──リージョナルフィッシュさんが初めてSOを付与したとき、従業員のみなさんの反応はいかがでしたか?
津田:SOを初めて付与したのは、創業して2年後でした。当時は代表である梅川が従業員一人ひとりに制度内容やメリットを伝えていたのですが、「そうなんだ」「なにかもらえるんだな」くらいに軽く受け止められてしまったようです。
宮島:リージョナルフィッシュには研究職出身者のほか、私や津田さんのような金融機関出身者、メーカー出身者、水産業出身者など、さまざまなバックグラウンドの従業員が集まっています。SOに関しては、存在そのものを知っている従業員もいれば、なかなかメリットが伝わりづらい従業員もいるという状況です。特に研究職の従業員たちは「好きな研究を続けられるかどうか」に重きを置いている人も多いため、ピンとこないという人も多かったんですよね。

──そうした状況下でも、わりと早い段階でSOを取り入れた目的は何だったのでしょうか?
津田:我々のようなディープテック企業は研究開発に多くの資金を投資し続ける必要があり、なおかつ事業を大きくするには一定の時間をかけることになります。特に創業初期は高い給与を支払うことが難しいのですが、それでも、リージョナルフィッシュに集まってくれた仲間たちがいます。彼らと一緒に企業価値を上げていくためにも、早い段階からSOを発行し、有効活用していくことにしました。
また、リージョナルフィッシュではお互いに「プロフェッショナルであること」を求めるカルチャーがあります。自分の職務に対して責任感を持って取り組むなかでは、上下関係はありません。そういった考えもあるため、最初からフラットな関係でありつつ、一丸となって事業に取り組める環境を作りたかったんですよね。
宮島:そうですね。リージョナルフィッシュの組織は「経営陣と従業員の距離が近い」と言えます。梅川はオフィスへ出社すると、従業員たちに直接会ってディスカッションしていることも多いですし、社内ではお互いに“さん付け”で呼び合っています。梅川も「社長」と呼ばれると少し嫌な顔をしていますね(笑)。

ストックオプション・プール15%×1円税制適格で「従業員に広く付与できるように」
──SO設計でこだわったポイントは?
津田:現時点における考えではありますが、SO設計で最もこだわったのは「従業員に広く付与できるようにすること」でした。そのうえで、「1円税制適格SO」と「SOプールは15%」をかけあわせることにしました。
まずは「SOプールは15%」についてです。先ほどお話ししたとおり、ディープテック企業として資金を事業に投資し続けるため、優秀人材採用のために報酬を上げるというのも難しい。従業員のみんなに付与しながら、今後はSOを活用した採用シーンも増えることを見越して「15%」にしました。一般的には10%に設定する企業が多いようですが、既存株主のみなさまには理解していただきました。

そして「1円税制適格SO」です。SOを発行するからには、付与した従業員みんなに幸せになってほしいと思っています。しかし、行使価格を会計上の株価に設定すると、費用計上が不要になり会社の財務インパクトは抑えられるものの、徐々に行使価格が上がることで、入社タイミングが遅くなるほどにインセンティブが減ってしまいます。また、あとから入社した人のインセンティブも確保しようとすると、付与する株数を増やすことになるためSOプールがすぐに枯渇してしまいます。それでは、本末転倒です。
そこで、国税庁から発表されたSOの税制適格に関する指針を参考にしつつ、会社の財務インパクトを鑑みた結果、行使価格を1円とする1円税制適格SOを付与することにしました。
宮島:SOの付与に関しては在籍期間や入社時の取り決めによって決まることも多いと思います。リージョナルフィッシュの場合は「企業価値の向上」にフォーカスし、多くの従業員に付与しつつ、貢献度によって付与個数に傾斜をつけています。

Nstockは企業成長と従業員のモチベーションの架け橋になってくれる
──Nstock導入のきっかけを教えてください。
津田:きっかけはICC(Industry Co-Creationサミット)です。1回目の付与時は管理ツールやサービスは利用していなかったのですが、実際にNstockに触れてみて使い勝手の良さと見やすさがいいと思いました。そして、2回目の付与時にあわせて導入を検討し、シリーズCラウンドでのファイナンス時に導入しました。まだ契約書管理や締結などでは使っていないのですが、付与調書の作成と従業員の個人情報管理・設定で活用しているところです。
──先ほど、1回目の付与時に、従業員の方々は軽い反応だったとお話していました。Nstock導入後、従業員の方々の反応はいかがでしたか?
津田:実はNstockを導入してすぐのころ、飲み会の余興として、シリーズCラウンドのファイナンス後の株価の変化を従業員のみんなと一緒に画面上で見てみたのです。そうすると、以前は軽い反応だった研究職の従業員が「おお!」と声をあげていました。

宮島:抽象的だったSOへのイメージが、Nstockによって具体的な数字として実感できるようになったからこその反応だったのだと思います。これまでいろいろと手を尽くしてSOの価値や存在意義を伝えようとしていた身としては「会社の成長を数字で実感してもらえた!」と感じた瞬間でした。
当然ですが、「ファイナンスしました」と社内に共有するだけでは、従業員は「そうなんだ」「調達できたから何だ?」となり自分ごと化されないまま終わってしまいます。しかし、Nstockがあることで「このファイナンスで、こんなにSOの価値が上がったのか」と実感できます。企業成長と従業員のモチベーションの架け橋になってくれると思いました。
津田:Nstockを開発している人たちに顧客目線があることも好印象でした。以前、Nstock側に「企業価値をシナリオごとに選べるようにしてほしい」とリクエストをしたことがありました。正直なところ、サービスに反映されるのは少し先だろうと思っていたのですが、想像より早く実装されていて驚きました。開発側の都合だけでなく、ちゃんと顧客目線に立っているんだろうと実感した出来事でした。

ストックオプションで企業価値の最大化に挑みたい
──今後についても伺いたいです。
津田:ディープテック企業として財源が限られるなか、引き続き、企業価値の最大化に挑んでいきたいと思っています。「品種改良の高速化によって日本の養殖業を高付加価値化し、サスティナブルな成長産業に変える」というリージョナルフィッシュのミッションに共感し、仲間になってくれる人たちのために、現在のSO設計内容についても、改良が必要なところがあれば加えていきたいと思っています。
──従業員のみなさんとともに大きなチャレンジをやり遂げるという、リージョナルフィッシュさんの強い意志を感じました。今後も応援しております。本日はありがとうございました!
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