ストックオプション、どう説明した?メディアエイドが明かした“正しく期待される”従業員向け説明会の裏側

自社のストックオプション(以下、SO)を正しく理解してほしい。けれど「誤解を招かないためにどう伝えればいいのか」「期待値を合わせるには何から話せばいいのか」などと悩む企業は少なくありません。
2025年10月、Nstockでは「SOの説明で社員はどう変わった?実践のリアルを聞くイベント」を開催しました。登壇したのは、「知らなかったを救う。」をミッションにSNSソリューション事業やSNSコマース&IP事業を展開する株式会社メディアエイド(以下、メディアエイド)のCFOである松田康平さんと、COOである石毛大哉さん。
メディアエイドの従業員数は約70名で、平均年齢は28歳。前職でSOを付与された経験がある人はわずか数%でした。SOそのものを知らなかったという人も少なくないなか、同社では従業員に向けてどのように説明をしたのでしょうか?当日のイベントでは、従業員向け説明会で実際に使った資料を用いながら、その裏側が明かされました。
ストックオプション設計でこだわったのは「全員に配ること」
まずはメディアエイドのSO設計についてです。
メディアエイドには「時代を超えて繁栄し続ける企業にしたい」という思想があります。2025年3月に実施した企業のリブランディングでは「すべての人に、必然の出会いを。」というパーパスと、「知らなかったを救う。」というミッション、「ソーシャルメディアをビジネスインフラにする。」というビジョンを新たに策定し、規格外の挑戦をすることを宣言しました。この挑戦には会社が一丸となる必要がある──そこで、従業員が貢献に見合った報酬を得られる手段としてSOを導入しました。


「従業員が理解できない制度、あるいは今まで貢献してきたのに報われない制度にはしたくないと思っていました。その考えをベースに、メディアエイドらしさを表した『革新・熱狂・至誠』という3つの要素を落とし込み、現在のSO設計が誕生しました。みんなで大きな成果を出して分かち合うために熱狂し、そしてエコノミクス的にも報われる制度にしたいと思いました」(CFO松田さん)
メディアエイドのSOプールは20%。SOを「退職時の持ち出しOK(※ただし権利確定分のみ)」とし、ベスティングも付与日起算で権利確定できるようにしました。なにより、特にこだわったのは「全従業員が付与対象」にすることだったとCFOの松田さんは振り返ります。

「当初から『全員に配りたい』という気持ちがありました。全員に配るからこそ、SOについて全員で話せる。この状態にすることが大事だったんです」(CFO松田さん)
一方で、メディアエイドでも「SOをいかに従業員に伝えるか」は課題でした。
「SOに対するイメージは、人によってグラデーションがあるように感じていました。『(SOをもらった人は)誰でも無条件にお金持ちになれる』と誤った期待を生み出すのは避けたいですし、逆に『現金化できるかどうかわからない不確かなもの』のイメージが強まりすぎてSO自体が期待されなくなることも避けたい。そのため、メディアエイドではSOに関する情報の正しさと期待値調整を両立させることを意識して、従業員向け説明会を実施しました」(COO石毛さん)

「SOに関する情報の正しさと期待値調整を両立させる」。これを、メディアエイドではどのように実践したのでしょうか?松田さんと石毛さんの話から、次のようなポイントが浮かび上がってきました。
- 【実践1】世間に広がるSOの「光と闇」を先に伝える
- 【実践2】SOによるリターンを明確にし、自分ごと化してもらう
- 【実践3】経営陣の言葉で熱量を持って伝える
【実践1】世間に広がるSOの「光と闇」を先に伝える
メディアエイドが従業員向け説明会のなかでまず取り上げたのは世の中にある「SOに対する両極端なイメージ(光と闇)」でした。
まず「光の側面」で紹介したのは、いわゆるスタートアップドリームです。具体例として、メルカリやANYCOLORでは多くの資産を得たメンバーが続出したとネットニュースにもなっていたことを挙げました。これによって「SO=お金持ちになれる」というイメージを持つ人もいる現状を伝えたのです。
「闇の側面」では、「某企業ではIPOまで在籍したのにSOを行使できずすべて放棄して退職することになった」「紙くずになることが多い」などが匿名で書かれたクチコミ内容を紹介しました。
なぜ、あえてネガティブな情報まで伝えたのでしょうか?その意図を、石毛さんはこのように明かしました。

「僕らが伝えなかったとしても、SOを付与された従業員たちは自分で調べるはずです。そのときにネガティブな情報に触れて『うちのSOも紙くずになるんだ。会社は都合のいいことしか教えてくれなかった』と感じられてしまったら期待や信頼を失います。世間に広まっている光と闇のイメージを共有したうえで『どちらも事実です。だからこそ、メディアエイドのSOを正しく理解し、当事者意識を持ってどう活用するか自分で選びとってほしいです』と伝えました」(COO石毛さん)
【実践2】SOによるリターンを明確にし、自分ごと化してもらう
このパートでは、会社の成長とSOによるリターンの関係性を図解し、視覚的に示しながら説明を行いました。図解では、メディアエイドのミッションである「知らなかったを救う=知らなかったを救った総量」が高まるほどに企業価値が上がり、それによってSOによるリターン(享受できる金額)も上がることがわかるグラフも用意されていました。
「『SOは宝くじのようなもの』と言われることがあります。しかし、メディアエイドのSOは違います。パーパスやミッション、ビジョンの達成度合いが企業価値につながり、その差分がSOによるリターンにつながる。その旨が明確にわかるように図解にしました」(COO石毛さん)

この説明にはもう1つの狙いがありました。それが「SOは自分たちで作り上げるもの」というメッセージを伝えることでした。
「メディアエイドにとってのSOはどんなものなのか、何をどのように達成するとリターンを得られるのか。それらをしっかり伝えることで、SOは『自分たちで作り上げるもの』と捉えてほしかったのです。また、企業によってさまざまなSOがありますが、他社のSOと表面的に比較しても無意味であることも伝えたいと思っていました」(COO石毛さん)

【実践3】経営陣の言葉で熱量を持って伝える
メディアエイドでは、月1回開催される全社オフラインイベント「全社会」と税制適格SOの詳細解説会、Nstockが同席して行うSO勉強会と、あわせて3回の従業員向け説明会を行いました。そのすべてに、メディアエイドの経営陣が参加しています。
「1on1でマネージャーから伝える方法もあると思います。でも、SOは会社の思想を反映した制度。伝える人によって文脈や熱量が変わってしまうリスクがあります。経営者の熱量のある言葉で、全員に同じ内容を届けることが大事だと考えました」(COO石毛さん)
従業員向け説明会全体を通じて伝えたかったのは「SOは熱い話であること」だったと松田さんは言います。お金の話はタブー視されることもあります。ですが、メディアエイドでは、SOはみんなで一丸となって頑張った成果であり、経済的に報われるポテンシャルがあるため、社内で話題にすることを避ける必要はないと話したそうです。

実は、この判断を「少し勇気が必要でした」とCFOの松田さんは当時の心境を明かします。
「正直、『SOは熱い話である』と直球で伝えるには少し勇気が必要でした。でも、弊社は『知らなかったを救う。』というミッションのもと、情報の透明化を大事にしています。それはもう、オフィスの会議室をすべてガラス張りにして透明にするくらい徹底しています(笑)。SOについても、オープンにしてみんなで制度を議論しやすくしたかったのです。従業員向け説明会で、SOの議論をすることはとても熱いことだと伝えられたおかげで、『質問してもいいんだ』『興味を持っていいんだ』という前提を作れたと思っています」(CFO松田さん)

「間違った理解が広がらないように工夫したことは?」「話す相手によって説明資料はカスタマイズしている?」
イベントでは、参加者から「伝え方」に関するさまざまな質問が寄せられました。ここではその一部をご紹介します。
Q. SOは成果が見えるまで時間がかかりますし、最近は多くの企業が取り入れるようになり、特別感も薄れているようにも感じます。そんななかで、SOのインセンティブ効果を保つためにどのような工夫をされていますか?
松田:企業の成長ストーリーとSOを結びつけることが重要だと思っています。メディアエイドでは、定期的に『会社がこれだけ成長して、自分のSOの価値もこれだけ増えている』と実感できる状態を作っていきたいと思っています。従業員のみんながSOの価値を感じられるようメンテナンスするなど、SOを設計した側の責任としてコミットしていくつもりです。

Q. 想定時価総額は従業員に開示していますか?
石毛:現時点では開示していませんが、売上目標などの業績数値はできるだけ開示しています。以前までは経営に関する数値は共有していませんでしたが、それでは「個人の頑張り」と「会社の成長」が結びつかなくなってしまうと感じました。そのため、現在は全社会や週1回の朝会で業績を共有し、良いときも悪いときも全員が状況を把握できる状態に変えました。
今後は事業計画と連動させながら時価総額も共有していきたいと考えています。数字を見せるだけではなく「自分たちのアクションの積み重ねが時価総額につながる」という文脈を一緒に伝えていくつもりです。
Q. 誤解や間違った理解が広がらないよう、工夫したことはありますか?
石毛:メディアエイドではマネージャー層以上の従業員が果たす役割を「結節点」と呼んでいます。従業員向け説明会の前に、まず結節点の機能を担うマネージャーたちに伝え、現場にも正しく伝える役割を担ってもらいました。オピニオンリーダー的な人たちが正しく理解していれば、もし間違った理解をしている従業員がいたとしても訂正してくれるはずという狙いがあったのですが、この仕掛けは効果的でした。

メディアエイドの従業員向け説明会、その結果は?
実際に、メディアエイドの従業員向け説明会は、従業員のみなさんにどう受け止められたのでしょうか?イベントでは、3回に及ぶ従業員向け説明会後に実施したアンケート結果を公開。そこには、好意的なコメントが寄せられていました。

「『企業価値を最大化した先に、SOによるリターンがある』というメッセージが伝わったと感じました。今後の運用が大事であるという前提ではありますが、従業員向け説明会の目標を、無事に達成できました」(COO石毛さん)
そして最後に、SOについて従業員に説明する際に大事なポイントについてCOOの石毛さんはこのように話しました。
「SOの前提には、会社の思想があります。最も重要なのは『うちの会社はなぜこの制度にしたのか』という思想から伝えること。それを理解してもらって初めて、SOは機能すると考えています」(COO石毛さん)

